耳はどうして遠くなる?
これまで、あすてる通信では加齢にともなって身体に起こる様々な変化をお伝えしてきました。
目、口、骨と筋肉…残る五感は聴覚と嗅覚です。
今回はその中から聴覚の老化について解説していきます。
老人性難聴(加齢性難聴)
老人性難聴とは、加齢によって起こる難聴で、誰にでも起こる可能性があるものです。
一般的に、50代頃から少しづつ聞こえづらさを感じる割合が増え、75歳以上になると7割以上の方に症状が現れると言われています。
主な特徴
① 高音部から聞き取りにくくなる
② 両耳がほぼ同程度に進行する
③ 純粋な音に比べて、話し声の区別がつきにくくなる
④ 男性のほうが低下しやすい
これらの主な原因となるのは、耳の中の蝸牛(かぎゅう)にある「有毛細胞」の減少です。
この有毛細胞は、鼓膜から伝わってきた音の振動をキャッチして電気信号に変え、脳に送る役割をしているのですが、加齢にともなってダメージを受け、徐々に壊れ減少してしまいます。
有毛細胞を減少させる要因として、生活習慣がかかわっていると言われています。
以下の持病や生活習慣のある方は注意が必要です。
・糖尿病・高血圧・脂質異常症・動脈硬化・喫煙習慣・過度の飲酒・騒音の環境
一度失ってしまった聴力は残念ながらほとんど戻ることがなく、老人性難聴の治療では、基本的に補聴器や人工内耳を用いて耳の機能を補っていくのが一般的です。
今では補聴器もインターネットで手軽に購入できる時代ですが、老人性難聴で利用する際にはまず専門家に相談し、ご自身に合った適切な器具を選択しましょう。
補聴器の種類
✅ポケット型
音を拾うマイクロホンと、レシーバーの部分が離れているタイプです。コントローラーにイヤホンをつないで使用します。他の型に比べるとサイズが大きいため、家の中での利用に適していると言えます。主に中度から高度難聴に対応。
✅耳掛け型
耳たぶにかけて使用するタイプの補聴器です。閉塞感の軽減をしたり、素材を工夫することで目立ちにくい補聴器も増えています。主に中度から高度難聴に対応。
✅耳穴型
耳の穴に入れて使用するタイプで、耳の形に合わせてオーダーメイドで作ることが一般的です。付けていることが目立ちにくいという特徴があります。補聴器をつけながらマスクやメガネ、帽子も装着できるため、外出時の利用にも適しています。主に、軽度から中度の難聴に対応。
難聴と認知症
わたしたちは「鼓膜に伝わったもの」を音だと思いがちですが、正確には「鼓膜から入った音が電気信号に変換され、脳に伝わったもの」が音になります。
つまり、耳は音を伝える器官であって、実際に音を認識しているのは脳なのです。
加齢性難聴は徐々に進行するため、脳に伝わる電気信号も徐々に少なくなります。
これは同様に脳への刺激が少なくなることを意味します。
その状態に脳が慣れてしまうことが、実は脳に悪影響を与えてしまうのです。
その一つが認知症リスクの高まりです。
難聴があると、他者とコミュニケーションがとりにくいと感じることがあります。そして、会話がうまくできずに、患者さんが閉じこもりがちになってしまうケースが多いのです。
そうすると次第に抑うつ状態に陥ったり、社会的な孤立を招くことにもつながりかねません。
海外での研究成果からは、中年期に難聴があると高齢期に認知症のリスクが上昇するというデータも発表されています。
他の器官もそうでしたが、身体機能の衰えと認知症は切っても切り離せない関係だと改めて実感しますね。正しい知識を身に着けて、老化の進行を緩やかにする努力をしていきましょう。