高齢者の一人暮らし、限界はいつ?

ライフスタイルの変化により、高齢になっても家族が別々に暮らしていることも今や珍しくありません。しかし、高齢者が一人きりで生活することにもいつか限界が来ます。
今回は、高齢者の一人暮らしにおける限界はいつ?というテーマについて解説していきます。

独居の現状と認知症の影響

令和5年版高齢社会白書によると、一人暮らしをする高齢者は2021年時点でおよそ743万人だそうです。
また、認知症を患う高齢者の数も増加の一途をたどっており、2025年には700万人に到達するともいわれています。実に高齢者の5人に1人が認知症という時代がすぐそこまで来ているのです。

高齢者が一人暮らしをしている場合、本人が自覚せずに認知症の症状が進行してしまうことも少なくありません。周囲が異変に気付く頃には、すでに一人暮らしが破綻している状況になっていることもあります。

高齢者が一人暮らしを続けられる限界点の目安として、「認知症」の症状に着目してみましょう。
認知症の症状として、短期的なできごとを覚えていられない記憶障害、時間や場所が分からなくなる見当識障害、計画を立てて工程をこなす能力が低下する実行機能障害などが挙げられます。
実際に、生活においてどのような問題があるのか挙げていきます。

認知症患者の生活問題

認知症患者が一人暮らしをする中で起きうる生活問題の一例を紹介します。

✅お金の管理
認知症の一人暮らしにおいて、金銭管理があやふやになってしまうことがあります。
特に光熱費等の支払い忘れ、残高の不足による未払いはライフラインが止まることに直結し、生活に大きな影響を与えます。
この他、正当な判断ができないまま不必要な契約を結ぶケースとして、複数社の新聞契約、訪問販売で同じものをいくつも買ってしまう、といった事例が考えられます。

✅薬の管理
認知症の一人暮らしでは、薬を飲み忘れてしまうこと、逆に何度も重複して薬を服薬してしまうことがよく見受けられます。
糖尿病、血圧の薬を服薬している場合、体調に大きな影響がありますので注意が必要です。

✅食事の管理
認知症の症状によっては、料理ができなくなる、1日に何食も食べてしまう、パンやお菓子ばかり食べ、栄養に偏りが出る、食事をとること自体を忘れてしまう、といったケースが考えられます。

✅徘徊(外出・迷子)
徘徊をしてしまう場合、季節によっては凍死や熱中症のリスクもある心配な行動となります。

✅衛生・健康面の悪化
抑うつや無気力の症状がみられる場合、着替えをしない、入浴を嫌がる、排泄を失敗しても片づけないこともよくあります。そのままでは不衛生な状態で生活を送ることになってしまいます。

✅火事や事故の危険
ストーブやガスコンロの消し忘れ、お風呂の空焚きなど、通常ならばボヤ程度で済むものも適切な対処ができず、パニックとなって大きな被害につながる可能性があります。
また、高齢者の交通事故は、認知症が影響していることも多々あります。

✅ご近所トラブル
ご近所トラブルとしてよく聞かれるのが「ゴミ問題」です。
認知症の症状により、ゴミの分別ができなくなったり、ゴミ出しの曜日や時間を頻繁に間違えるが発生する
また、その結果ゴミをため込み、異臭を発生させるケースもあります。

一人暮らしの限界と解決策

先に挙げた問題点が散見される場合、ひとりでの生活が立ち行かなくなっている状態、つまり一人暮らしが限界を迎えていると考えられます。
認知症は進行性の病気ですから、高齢の独居者が身近にいる場合には定期的に訪問をし、その兆候を見逃さないようにしましょう。

また、これ以上一人で生活をさせるのは難しいと感じた場合、早急に対策を打つ必要があります。
ひとつは、同居をすることです。
目の届く範囲でサポートをすることができます。
ただし、それまでの一人暮らしとは違う生活になるため、混乱からくる症状の悪化や、受け入れる家族の生活環境の変化も加味しなければなりません。

同居が難しい場合には、老人ホームへの入所を選択肢に入れましょう。
見守りや介護を受けながらの生活となるので、ひとり暮らしではないという安心感があります。
とは言え、集団生活になることは、それまで一人で暮らしてきた高齢者にとっては大きな環境変化となります。

いずれにしても、早いうちに家族で話し合い、限界がきても焦らないよう準備しておきましょう。

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