経鼻経管栄養とは
高齢になると、さまざまな要因によって嚥下機能が低下し、経口摂取以外で栄養を取り入れなければならないケースが多々あります。その際の栄養摂取方法のひとつが経鼻経管栄養です。
この記事では、経鼻経管栄養の手順と起こり得るトラブルについてご紹介します。
経鼻経管栄養とは?
経鼻経管栄養は、鼻から胃にやわらかいチューブを通し、そこから胃、十二指腸、空腸などに栄養剤を注入し、消化管の機能を維持しながら栄養を補給する手法です。
比較的容易に行うことができ、口や喉の手術のあとや、脳、神経の疾患、嚥下に障害があるものの消化機能には異常がない場合などに選択されます。
在宅でも利用可能ですが、トラブルの発生を防ぐためには正しい手順でおこなう必要があります。
また、経鼻経管栄養はあくまでも一時的な処置であり、3週間以内が目安です。
4週間を超えて経鼻経管栄養が必要な場合は、胃ろうなどほかの栄養摂取方法の検討が必要となります。
経鼻経管栄養のメリット
①手術の必要がない
経鼻経管栄養のメリットは、手術の必要がないことです。
胃ろうや腸ろうの場合には、腹部に穴を開けて胃や腸に直接チューブを挿入するための手術が必要となりますので、患者が受ける身体的、心理的負担が大きくなります。
その一方で、経鼻経管栄養は鼻からチューブを挿入する手法であるため、手術を要さずに栄養剤を注入することができます。
②処置の中断がしやすい
経鼻経管栄養には、いつでもその処置を中止できるというメリットもあります。
口から食事や栄養を摂取できる状態に回復すれば、チューブを挿入しておく必要はありません。
チューブは抜き取りが比較的容易ですので、口から食事や栄養を摂取できるようになったときには、経口摂取へスムーズに切り替えができます。
③誤嚥性肺炎を防ぐ
経鼻経管栄養を利用することで誤嚥性肺炎を防げる点もメリットのひとつです。
嚥下機能が低下しているにもかかわらず経口摂取による食事を継続している場合、誤嚥性肺炎を引き起こすリスクがあります。
経鼻経管栄養では胃や腸に直接栄養剤を流すため、誤嚥性肺炎を防ぐことができます。
④消化管の機能を維持する
経鼻経管栄養によって注入された栄養剤は身体の自然な働きに近い形で栄養摂取が可能です。
消化吸収のために胃腸を使うことは、消化管の働きの維持につながります。また、消化管機能の維持によって、腸の免疫機能が保たれることもメリットと言えます。
⑤血糖値の急変動が起こりにくい
腸ろうは直接腸に、経静脈栄養は血液に直接栄養剤が流れるため、血糖値が急変動することがしばしば見受けられますが、経鼻経管栄養では鼻から胃に栄養剤が流れていくため、自然に近い流れで腸まで栄養剤が届くことから、腸ろうや経静脈栄養と比べて血糖値の変動が起こりにくいというメリットもあります。
⑥在宅でも利用ができる
経管栄養のチューブ挿入は医師や看護師が処置しますが、栄養剤の注入や普段のチューブの管理は家族でもおこなうことができます。
また、チューブ入れ替え処置も、訪問診療や訪問看護で医師や看護師が訪れた際に交換の対応が可能です。
経鼻経管栄養のデメリット
①チューブを誤って抜いてしまう可能性
通常、チューブは鼻や頬などにテープを使って固定しますが、挿入しているチューブを誤って抜いてしまう可能性があります。
とくに、認知症の方は注意が必要です。鼻に違和感を感じ、チューブに触れてしまうことも少なくありません。もしチューブを誤って抜いてしまうと、栄養剤を注入するために再度チューブの挿入が必要となります。そうなれば栄養剤を注入するまでの時間が空いたり、再挿入のために負担がかかったりすることを覚えておきましょう。
②定期的なチューブ交換
経鼻経管栄養で用いるチューブは細く、栄養剤が詰まりやすいことから定期的にチューブを交換しなければなりません。
汚れたチューブをそのままにしておくと、胃に汚れが流れてしまったり、チューブが詰まって栄養剤が流れなかったりとさまざまなリスクが生じます。そのため、定期的にチューブを交換する必要があります。
栄養剤注入の手順
経鼻経管栄養を行う際には、まず栄養剤を注入しても問題がないか確認する必要があります。事故を防ぐためにも、栄養剤を注入する前にまずは下記の項目を確認してください。
★栄養剤注入前
✅チューブが口の中でとぐろを巻いていないか確認します。
✅呼吸の状態は苦しそうではないか確認します。
★栄養剤注入時
✅ベットに寝た状態から上半身だけを45度起こした体位(ファーラー位もしくは)座位(医師が指示した角度)に体位を整えます。
✅常温に戻した栄養剤を準備し、チューブの留置状態を確認します。
✅チューブの挿入状態を確認し、栄養剤を注入します。
✅注入中は滴下状態を常に観察しましょう。
✅栄養剤の注入が終わったら、微温湯をチューブ内に流し、洗浄します。
✅注入終了後30分程度は、ファーラー位か座位を保持するようにします。
まとめ
経鼻経管栄養は、在宅でも可能な栄養摂取方法です。
一方、栄養剤の準備や注入前後の観察など注意点も多く、家族の負担が大きい処置でもあります。
本人の意思や、医師、ケアマネにもしっかり相談したうえで、介護施設への入居を検討するなど様々な選択肢を考えておきましょう。