【筋肉量の減少による身体機能の低下】サルコペニアを学ぼう

更新日:2024.04.19

これまでフレイルやロコモティブシンドロームといった加齢に伴う身体機能の低下を紹介してきました。加えて、もう一つ気を付けたいのが「サルコペニア」です。
今回はこのサルコペニアについて、詳しく解説していきます。

サルコペニアとは?

サルコペニアとは、筋肉量が減少することで筋力低下、身体機能低下をきたした状態を指します。
加齢と共に筋肉量は低下しますが、日常生活に支障が生じるほどに影響を受けている状態がサルコペニアです。

サルコペニアは、環境的な変化が誘因になって発症することもあります。
たとえば、病気をきっかけに入院生活をしたことで、数日から1週間といった短期間の間に急激な経過でサルコペニアを発症することがあるのです。

具体的には歩くのが遅くなる、手の握力が弱くなるなどといった症状が見られます。
超高齢社会に突入している日本においてサルコペニアは問題となっており、いずれ転倒や骨折、寝たきりなどにつながることで生活の質を著しく低下させる懸念があります。

サルコペニアの要因

サルコペニアは加齢に起因する一次性サルコペニアと、加齢以外にも要因がある二次性サルコペニアに分類されます。

二次性サルコペニアは、身体的な病気(重症臓器不全や神経筋疾患、炎症性疾患、悪性腫瘍など)や栄養不足から引き起こされることがあります。これらの原因によって、筋肉の代謝に関わるホルモン(ステロイドや成長ホルモン)や炎症性サイトカインなどが健常時から変化することで、筋肉の分解量が筋肉産生量を上回ることから発症する可能性があるのです。

具体的な症状は以下の通りです。
✅歩行が遅くなり信号機が青の間に交差点を渡ることができない。
✅階段の上り下りに支障が生じ、手すりが必須となる。
✅手の筋力が低下し、ドアノブやペットボトルのふたをうまく回せない。

このようなサルコペニアの状態になってしまうと、ふとした拍子に転倒し骨折する可能性もあり、寝たきりになってしまうリスクも伴っています。

診断基準

サルコぺニア診断の際には、筋肉量の減少、筋力の低下、身体機能の低下の3つの要素を問診や身体診察によって確認します。筋肉量を測定するには、DXA法やBIA法と呼ばれる方法があります。

✅DXA法
2種類の異なるエネルギーのX線を使い、骨密度を測定する方法です。一般的には腰の骨や太もものつけ根、手首の骨の骨密度を計測します。

✅BIA法
体に微弱な電流を流し、その抵抗値を計測して脂肪や筋肉率などの体組成を推定する方法です。

そのほか、筋力がどの程度保てているかを確認するために握力を測定したり、身体機能低下を確認するために歩行速度を測定したりします。

握力の低下基準は男性 26kg 未満、女性18kg 未満、歩行速度低下の基準は0.8m/秒以下であり、どちらかを満たしかつ骨格筋量が規定値を下回った場合にサルコペニアと診断されます。

治療方法

食事療法

筋肉はタンパク質をしっかり摂取することで産生されます。そのため、サルコペニアを改善するためにはタンパク質の豊富な食事を心がけることが重要です。
具体的には、動物性たんぱく質である、肉(特に赤身の肉)や魚、乳製品を十分に摂取するよう意識することが推奨されています。

また、分岐鎖アミノ酸と呼ばれるタイプのアミノ酸は身体の中で産生することができず、食事として摂取することが必須です。これらを多く含む鶏肉やマグロ、牛乳などの摂取を心がけることも重要です。

さらに、必要なエネルギー源としての糖質摂取、骨粗しょう症を予防するためにもカルシウムやビタミンDの摂取なども重要です。

運動療法

食事だけでは筋肉量が回復しませんので、運動療法も大切です。なかでも筋肉に負荷をかけるレジスタンス(抵抗)運動が有効であるといわれています。

運動療法による効果を最大限得るためにも、日常生活のなかに無理のない範囲で運動療法を取り入れましょう。たとえば、テレビを見ながら椅子から立ち上がる運動をするだけなどでも、継続することで効果が期待できます。

サルコペニア?ロコモ?フレイル?3つの違い

3つの疾患概念は共通点も多いため、判別が難しい側面もあります。ただし、どれも要介護の危険因子であることには変わりありません。その概念について整理すると、以下のようになります。

サルコペニア…加齢や生活習慣などの影響によって、筋肉が急激に減少する状態

ロコモティブシンドローム(ロコモ)…運動器の障害によって移動機能が低下した状態

フレイル…病気ではないものの健康ともいえず、介護が必要なほどでもない状態

まとめ

加齢に伴う心と体の変化をしっかりと認識し、段階に応じた正しい健康維持法を選ぶことができるよう、それぞれの症状の意味を理解した上で、状況に応じて生活を改善していきましょう。
誰しも加齢によって介護を必要とする時期が来るかと思いますが、少しでも自立した状態で健康を維持するためには生活習慣を見直すことが重要です。

この記事は、2024年04月19日に更新されました。
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