介護保険でどんなサービスが利用できる?【施設サービス編】

これまでの記事で介護保険を利用して受けられる在宅サービス、地域密着型サービスを解説してきました。今回お伝えするのは最後のカテゴリである施設サービスです。
この施設サービスでは、介護老人保健施設や介護老人福祉施設、介護医療院に入所した要介護状態にある高齢者に対して、一般的な介護や、リハビリ、療養上の管理や看護といったサービスが提供されます。それではその違いを一つずつ見ていきましょう。

✅介護老人保健施設(老健) 要介護 
要介護1以上の高齢者を対象とし、その自立の支援、在宅復帰、在宅療養支援などをおこなうための施設です。たとえば、長期入院のあと、病状が安定して治療は必要ないもののリハビリに重点を置いたケアが必要な時や、いきなり自宅へ戻るのは困難な場合などによく利用されています。
常勤の医師と、一定数の看護スタッフが勤務しているため手厚い医療体制が整っていると言えます。
看護師については夜間の常駐が義務付けられているわけではありませんが、地域の医療機関と連携をしているため24時間安心して過ごすことができます。

✅介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム) 要介護3~5 
原則要介護3~5の高齢者を入居の対象とした、公的な福祉施設です。
介護老人保健施設の目的が在宅復帰を目指したリハビリ中心のサービスであることに対し、介護老人福祉施設では、原則として終身にわたって介護が受けられます。終の棲家としても利用できる、介護の最終的な受け皿ともなっているのです。

✅介護療養型医療施設  要介護 
病状が安定期にあり、長期の療養を必要とする方のための医療施設です。
療養上の管理や看護などの医療が受けられます。※2023年度末で廃止

✅介護医療院  要介護 
介護療養型医療施設の廃止決定に伴い、平成30年より新設されました。長期にわたって療養が必要な方を受け入れ、医療的なケアと共に介護を一体的に提供する施設です。

介護保険利用の実例

一人暮らしをしている72歳女性のケース  要介護1 
【状況】
過去に脳梗塞を患い、その後遺症で右手に麻痺が残っている。
リハビリを続けながら、住み慣れた自宅で少しでも長く生活したい。
右手が思うように動かないため、食事の支度や入浴、トイレでの動作を不便に感じる。
これらを解消するため、手すりの設置を希望。
【ケアマネと相談して決めた援助方針】
1人でも自宅で安全に生活できるように環境整備をおこなう。
また、筋力や運動機能の低下を防止するため、通所のリハビリを利用。
経過を見ながら、症状の変化や本人の希望に合わせて必要な支援を随時おこなう。
【課題とサービス内容】
●安全な生活環境の整備
①トイレ/手すりや立ち上がりバーをレンタルし設置
②浴室/手すりやシャワーチェアを設置
●リハビリの継続
週に二回通所のリハビリ
●生活
訪問型サービスを利用し、食事の調理や買い物、清掃を依頼(週二回)

家族と同居の82歳男性のケース  要介護4 
【状況】
もともと認知症の診断があったことに加え、自宅で転倒し腰椎を圧迫骨折してから歩行にも支障が出るようになってしまった。
現在は同居の家族が交代でなんとか介護をしているが、認知症の症状も進行し、怒りっぽい、被害妄想といった症状が見られる。家族は自宅での介護に限界を感じている。
【ケアマネと相談して決めた援助方針】
特別養護老人ホームへの入居条件を満たしているため、入居を検討
【課題とサービス内容】
●歩行不安定で転倒の危険がある
①杖歩行時に左側を支える介助をする
②座位時も転倒がないよう、見守りや声掛けをおこなう
●認知症進行予防
①感情が不安定になることがあるが、傾聴をして精神的に安心して過ごせるよう支援
②専門医の診療によって症状の改善や悪化を防止
●生活
特別養護老人ホームにて、必要な介護を受けながら施設での生活リズムに馴染んでもらえるようサポート。看取りまでのケアを視野に入れる。

ここでは2つの事例を紹介しましたが、それぞれの身体状況や家庭環境によって介護の内容は変わるものです。
これまで4回にわたり、介護保険を利用して受けられる介護サービスをお伝えしましたが、ご自身や家族の状況に当てはめてケアマネージャーとも相談をしながら様々なサービスを組み合わせ、必要な介護サービスを利用しましょう。

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