パーキンソン病と介護

皆さんはパーキンソン病という病気をご存じでしょうか。
筆者の祖母は50代でパーキンソン病と診断されました。どんどんと腰が曲がっていき、手足もうまく動かなくなり、ほぼ寝たきりになると同時に認知症の症状も進行、最後には家族のことも分からない状態となり70代で亡くなりました。
この記事では、パーキンソン病がどんな病気なのか、またその介護のポイントについてお伝えしていきます。

パーキンソン病とは

パーキンソン病は、現在338種指定されている難病の一つです。難病とは、発病の原因が明確でないために治療方法が確立しておらず、長期の療養を必要とする疾患を指します。
難病法や障害者総合支援法による福祉的支援を受けることができます。
介護保険制度においても、16種の「特定疾病」に指定されており、40歳以上のパーキンソン病患者は介護保険認定申請が可能です。申請後に判定された要支援・要介護度に応じて介護保険サービスを受けることができます。

パーキンソン病の患者は10万人に100人~150人(1000人に1人~1.5人)と言われており、中でも高齢者の発症率は100人に1人ですから、高齢化社会では決して珍しい病気ではありません。
その主な症状は、「振戦(ふるえ)」「動作の緩慢」「筋強剛(こわばり)」「姿勢保持障害(腰曲がり)」といった運動症状と、「自律神経の症状(便秘や頻尿)」「睡眠障害(不眠)」「精神症状(うつ病)」「認知機能障害」といった非運動症状があります。
徐々に進行していく神経変性疾患であり、最終的には自力歩行も困難となるため車椅子や寝たきりの状態となるケースが多く、介護とも深くかかわる病気と言えます。

冒頭に記載した通り、現在の医学ではまだ明確な治療方法が存在しない難病ですから、その治療内容は進行を遅らせるための薬物療法と、リハビリテーションにとどまります。

パーキンソン病発症のメカニズム

心身の状態をコントロールする総合司令塔の役割を持つのが脳ですが、その脳が出す指令は「神経伝達物質」によって体中の各部位に伝えられ、運動をしたり、いろいろな感覚を感じたりします。
パーキンソン病では、中脳の一部を占める神経核、「黒質」にある神経伝達物質「ドパミン(ドーパミン)」が減少することにより、運動機能に支障が生じていきます。
この「ドパミン」の量が減る原因は、まだ十分には解明されていませんが、加齢に伴った脳の何らかの変化や、一部の遺伝子に関連した変化が原因なのでは、と推定されています。
ドパミン神経細胞の中にαシヌクレインというタンパク質が凝集して蓄積し、ドパミン神経細胞が減少すると考えられていますので、このαシヌクレインが増えないようにすることが、治療薬開発の大きな目標となっています。

関連する認知症

パーキンソン病に関連した認知症には、レビー小体型認知症とパーキンソン病に伴う認知症があります。その診断基準としては、パーキンソン病の症状が発現して認知症の発症が1年以内なら、レビー小体型認知症とされています。
このレビー小体型認知症は、レビー小体という変性した細胞が脳の大脳皮質や脳幹部に生じ、その影響で脳神経細胞が破壊され生じる認知症です。
パーキンソン病と同様になぜこのようなレビー小体が生じるのかはいまだ解明されていません。
また、他の認知症と比較すると進行が速く、脳の萎縮や死滅が目立たないため、MRIやCTによる画像診断では判断できないことがほとんどです。

認知症の診断においては、その症状の原因が認知症によるものかどうか、認知機能、記憶、実行機能などについて、口頭質問や、文字・図形・絵などを描いて検査する神経心理学検査が実施されますが、レビー小体型認知症では記憶や計算機能といった課題よりも、「時計を描画してください」など視覚を使う課題がうまくできない傾向がでます。
このような事例からも分かるように、レビー小体型認知症における特徴的な症状のひとつに実際にはいないものが見えるように感じる「幻視」があげられます。
一方、認知症の発症がパーキンソン病を発病してから1年以上の場合、パーキンソン病に伴う認知症とされていて、運動症状が強く現れるのが特徴です。

パーキンソン病患者の介護におけるポイント

✅衣服
パーキンソン病が進行してくると、身体のふるえやこわばりから衣服の着脱がうまくできなくなってしまいます。そのため、衣服の着脱に介護を要することがほとんどです。伸縮性があり着脱のしやすいもの選ぶといいでしょう。
ウエストゴム、大きいボタン、マジックテープで開閉できる衣類は着脱しやすいので重宝します。

✅住まい
運動機能が徐々に低下することで転倒のリスクが高まるため、初期は廊下や玄関、トイレ、お風呂などよく移動する箇所に手すりを取り付けるといった対策が必要になります。
症状が進行するにつれて、歩行が難しくなれば車いすや介護ベッドを利用することになりますから、住まいの中の段差をなくしてバリアフリーの状態にすることも重要です。

✅食事
体がうまく動かせない症状から、箸が持ちにくくなったり、食事中の姿勢が傾いたりしてしまいます。また、飲み込む力が衰える嚥下機能障害も出やすいため注意が必要です。食べやすい食器や食材を選ぶことはもちろん、その調理方法においても細かく刻む、すりつぶす、とろみをつけるといった工夫が必要になってきます。

✅排せつ
パーキンソン病でよく見られるのが「便秘」と「頻尿」です。いきむ力が弱くなっていることに加え、自律神経も関連してこれらの症状が出やすい傾向にあります。水分の摂取を促したり、発酵食品や食物繊維の多いものをメニューに加えましょう。
また、和式より洋式のトイレの方が、パーキンソン病患者にとって負担が少なく済みます。

✅入浴
パーキンソン病患者にとって、入浴をすることは身体を温め、筋肉のこわばりを和らげたり、自律神経障害による冷えを改善するのに効果があります。症状が初期の頃は浴室に滑り止めマットを敷くなど転倒を予防したり、立ち上がりやすいようにシャワーチェアーを置いておくと便利です。

これまで見てきたように、徐々に身体が動かなくなっていくという症状の特性上、生活のあらゆる面で介護が必要となるのがパーキンソン病です。高齢者の発症率を見ても、決して珍しい病気ではありませんから、事前に知識を身につけておくことで今後起こりうる万が一に備えましょう。

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