何歳まで働く?定年後の労働問題

更新日:2024.01.16

生活環境の改善や医療の発達などにより日本の平均寿命は伸び続け、ついには人生100年時代となりつつあります。かつては多くの企業で定年退職の年齢も55歳とされていましたが、高齢者雇用安定法改正により再雇用や年齢の引き上げが義務付けられ、今では65歳、70歳まで働くことが一般的になってきています。今回は、そんな高齢者の労働について解説していきます。

少子高齢化と労働力の不足

今後の日本の人口予測として、2030年に約1億1600万人とされています。その中で65歳以上の高齢者が占める人口は約3700万人と推定され、これは全体の約3割に当たります。
そして、経済や労働環境と深く関わる15歳~64歳までの生産年齢人口は2030年には約6700万人となる予測です。
2010年の生産年齢人口は約8000万人でしたから、約2.8人で高齢者1人を支えてきたものが、20年後の2030年には約1.8人で1人を支える計算になっていきます。

実際に2021年の出生数は84万人、対して死亡数は145万人となっており、約60万人の人口が自然減しています。これは新型コロナウイルスのまん延、女性の社会進出、生涯未婚率の増加と共に今後も加速していく見込みとなっています。

高年齢者等の雇用の安定等に関する法律

高齢者と労働に関する法律の変遷として、1971年に初めて「中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法」が制定され、1986年に60歳定年が努力義務として定められました。
その後、社会情勢に合わせて段階的に改正を繰り返し、2021年の改正では、70歳までの定年延長を努力義務とし、現在は法改正の経過措置期間にあたり、2025年4月からはすべての企業に「65歳への定年の引き上げ」「定年廃止」「65歳までの継続雇用制度」のいずれかが義務づけられます。

定年年齢が引き上がると、人生における労働の期間が長くなるとも言えます。医療は発達したとしても、60代ともなると確実に体力は衰え、何かしらの持病を抱えている人がほとんどです。
そのため、高齢労働者の仕事内容や役職等に関しては、場合によって変更する必要が出てきます。労働条件を変更することを予定するのであれば、新たに労働条件を結び直し、労働時間や勤務日数、配置等を変更するといった手続きも発生しますから、しっかり確認しておきましょう。

雇用者側には、65歳以降についても、年齢にかかわらず意欲と能力に応じていつまでも働き続けられる制度の導入や、高年齢者の働きやすい職場づくりが求められており、要件を満たした場合には高年齢者雇用に関する助成金を受けられる可能性もあります。

高年齢者の雇用 |厚生労働省 (mhlw.go.jp)

シルバー人材センター

長年勤めた企業以外で高齢者が働き先を探す際に、シルバー人材センターを使うという選択肢があります。これは「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」に基づいて事業を行う公益法人です。
都道府県知事の指定を受けており、原則として市区町村単位に設置されています。
高齢者に労働の機会を提供し、生きがいの充実や生活の安定、地域社会の発展や現役世代の下支えなどを推進することを目的としています。

シルバー人材センターでは、家庭や企業、公共団体などから、高齢の方にふさわしい仕事を引き受けて会員に提供しています。また、ボランティア活動や介護事業、独自事業などを実施しているシルバー人材センターもあります。
短時間の仕事が多いため、体への負担が少なくお仕事をすることができます。

主な仕事の例

技術分野学習教室の講師、翻訳・通訳など
技能分野植木剪定、大工仕事、ペンキ塗りなど
事務分野一般事務、パソコン入力、宛名書きなど
管理分野建物の管理、駐輪場の管理、施設の管理など
折衝外交分野販売員、電気・ガスなどの検針など
一般作業分野除草・草刈り、屋内・屋外清掃、包装・梱包など
サービス分野家事サービス、福祉サービス、育児サービスなど

これらはあくまでも一例になります。実際の業務内容はシルバー人材センターごとに異なりますので、詳しくは、お住まいの各市区町村のシルバー人材センターにお問い合わせください。

年金受給と所得の関係

定年が65歳以上に引き上げられると、65歳から受給できる年金はどうなる?という疑問を持つ方が多いのではないでしょうか。
公的年金制度は、働けなくなった高齢者や障がい者の生活を支えることが目的ですので、その制度に加入して年収を得ている間は、年金額が調整されてしまいます。これは「在職老齢年金制度」と呼ばれ、減額や全額停止の対象となってしまうのは、厚生年金の部分です。
その基準として、65歳から受け取る老齢厚生年金の基本月額と 賞与を含むお給料 (総報酬月額相当額)の合計額が月47万円以下の場合は、全額受け取ることができ、月47万円を超える場合は、一部または全額が支給停止になります。

必要に応じて繰り下げ需給の手続きをしたり、仕事量を調整して収入を抑えながら計画を立てて年金を受給する必要がありますね。年金については別記事でも解説しておりますのでチェックしてみてくださいね。


この記事は、2024年01月16日に更新されました。
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