後期高齢者医療制度について学ぼう

更新日:2023.02.09

風邪を引けば病院に行き、薬を出してもらう…誰でも一度は経験したことがあるのではないでしょうか。日本ではすべての国民が公的医療保険に加入することになっている「国民皆保険制度」がありますから、病気のとき、事故に遭ったときなど、本来は高額である医療費の負担を軽減することができます。
今回は、公的医療保険の後期高齢者医療保険制度について解説していきます。

国民皆保険と後期高齢者医療制度の歴史

日本の国民皆保険の制度は1961年にスタートしました。
この国民皆保険が創設された1961年当時は、人口構成が若く、なおかつ政治も安定し、経済も成長過程にある、という歴史的背景がありました。
しかし現在は少子高齢化が進み、なおかつ経済も低成長時代。高齢化にともなって75歳以上の高齢者にかかる医療費が膨れ上がる形となり、保険のシステムを維持しながら長い将来に渡りその運営を持続可能なものにする必要があることから、都道府県単位の広域連合が運営主体となり2008年の4月より後期高齢者医療制度が始まりました。

後期高齢者医療制度では、満75歳以上を迎えた高齢者について、これまで加入していた国民健康保険から抜けて、自動的に後期高齢者医療保険へ加入となります。手続きは不要です。
そして制度の最大の変更点は、財源の一部を75歳以上の高齢者が負担するようになったことです。それまでの老人保健制度の財源は、公費が50%、国民健康保険と社会保険からの支援金が50%で成り立っていましたが、後期高齢者医療制度では国民健康保険と社会保障からの支援金の負担割合を40%に減らし、削減した10%を75歳以上高齢者の保険料で割り当てることになりました。

後期高齢者医療制度の対象者

✅75歳以上の方(75歳の誕生日当日から資格取得)
✅65歳以上74歳以下の方で、寝たきり等一定の障害があると認定された方(認定日から資格取得)

後期高齢者医療制度の窓口

後期高齢者医療制度は、各都道府県の広域連合と市区町村とが連携して事務をおこなっています。基本的な役割分担は以下のとおりです。

✅広域連合
財政運営や資格の認定、被保険者証等の交付、保険料の決定、医療給付の診査、支払いなど
✅市区町村
各種届出の受付や被保険証等の引き渡し等の窓口業務、保険料の徴収など

22年10月医療費の窓口負担割合改正

これまで後期高齢者医療制度の被保険者が、受診した際に支払う自己負担額は原則1割、現役並みの高所得者(単独世帯で年収383万円、夫婦2人世帯で年収520万円を超える場合)は3割負担という所得制限が設けられていましたが、 2022年10月1日からはこれまで1割負担だった方の中で、一定以上の所得のある方の窓口負担割合が2割になりました。

具体的には課税所得が28万円以上かつ「年金収入+その他の合計所得金額」が、単身の場合200万円以上、複数世帯の場合合計320万円以上の方です。
その改正には団塊の世代が75歳以上となり始め、医療費の負担がこれまで以上に増加することが見込まれる、という背景があります。

ただし、この改正への配慮措置として2割負担への変更により影響が大きい外来患者(入院の医療費は対象外)について、2022年10月1日から2025年9月30日までの3年間は、これまでのひと月分の1割負担だった場合と比べた負担増分を、最大でも3000円に収まるようにする措置がとられます。
これは、同一の医療機関での受診については3000円以上窓口で支払わなくともよい取り扱いになっており、そうでない場合は3000円との差額が後日高額療養費として払い戻されます。

今後の展望

これまで見てきたように、国民皆保険制度は時代の移り変わりとともにその時々の情勢合わせて改正がなされています。現状、日本における少子高齢化の傾向は改善する見込みはありません。その一方で医療や治療薬などは進化・発展するものの、医師不足も懸念されることから治療費そのものが高くなる事態が発生する可能性もあります。自助努力による貯蓄もある程度は必須になっていきそうです。
いざというときに困らないよう、しっかり情報を収集して、利用できるサービスなども確認しておきましょう。

この記事は、2023年02月09日に更新されました。
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