老老介護、認認介護
高齢化、核家族化が進行している現代の日本で、深刻な問題となっているのが老々介護、認認介護です。今回は、この高齢者同士の介護について詳しく解説していきます。
老老介護
介護者、被介護者ともに65歳以上の高齢者となっている状態のことを老老介護といいます。
夫婦間だけでなく、親子や兄弟の間など様々な間柄で生じます。
日本の人口比率において、65歳以上の高齢者は全人口の25%を超えており、4人に1人が高齢者という状況です。老老介護の割合は在宅介護をおこなう世帯で年々増加しており、高齢化社会における大きな社会問題となっています。
認認介護
高齢の認知症の患者を、同じく認知症の家族が介護している状態のことを認認介護といいます。
認知症の症状があっても日常生活は送ることができるため、要介護申請をしていない方や、認知症の自覚がないまま介護を続けている方も少なからずいると考えられ、認認介護の正確な実態を把握するのは難しいといわれています。
老老、認認介護が増えている背景
高齢者同士、認知症患者同士の介護が増えている背景には、平均寿命と健康寿命の差が関係していると考えられます。平均寿命と健康寿命は、以下のように定義されています。
■平均寿命:出生してから亡くなるまでの平均余命
■健康寿命:介護を必要とせずに健康的に過ごすことができる期間のこと(WHOが提唱)
医療の技術が進化した現代では、昔に比べて平均寿命が長くなっています。
その数値は、男性が 81.47 年、女性が87.57年です。(2021年/厚労省令和3年簡易生命表)
一方、健康寿命は男性が72.68年、女性は75.38年(2019年/内閣府高齢社会白書)となっており、どうしても平均寿命と差が開いてしまいます。
ピンピンコロリという言葉があるように、亡くなる直前まで介護を必要とせず、元気に過ごす高齢者もいますが、誰もがそうなれるわけではありません。
年相応に、身体や認知の機能は低下するのが一般的なのです。
この平均寿命と健康寿命の差に加えて、出生率の低下や核家族化なども影響し、介護ができる子どもが減ってきています。子どもが遠方に住んでいる場合も同様のことがいえます。
そのため、同居している配偶者が高齢である場合にも、介護者にならなければならないという状況があると考えられます。このほか、経済的な余裕がないために、施設入所や介護サービスの利用ができず、老老介護を選ばざるを得ないというケースもあります。
令和3年簡易生命表の概況|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
令和4年版高齢社会白書(全体版)(PDF版) – 内閣府 (cao.go.jp)
高齢者同士の介護における問題点
✅身体的負荷
介護は、ある程度体重のある大人を起き上がらせたり、支えたりする必要があるため、体力を使います。これは、筋力の落ちた高齢の介護者にとっては大きな負担です。
また、 ひとつひとつの介助に時間がかかってしまうと、介護される側も不安定な姿勢が続くなど負担に感じることがあります。また、転倒などの事故につながる危険性もあります。
✅心理的負荷
介護に追われることで、介護者の心の余裕がなくなってしまうことも考えられます。このような状態になっても誰かに相談できずにいると、介護疲れやストレスが原因でうつ病を発症する(介護うつ)恐れもあり、これが原因で介護放棄や虐待、犯罪につながるケースもあるため注意が必要です。
✅身の回りの管理
特に認認介護の場合、食事を済ましたかどうか、薬は飲み忘れていないか、などの管理が分からなくなるという問題があります。過食や栄養の偏り、服薬漏れや過多摂取による体調の異常などにつながりかねません。
また、認知症に伴う自律神経の働き低下によって、体温調節がうまくできず熱中症になる、水分補給を忘れて脱水症状に陥るといったケースも多々あります。
高齢の二人暮らし世帯については、お子さんがいない、いても遠方でなかなか様子を見に来ることができない場合も多く、地域の方々が気にかけてあげることも大切です。
行政のサポートや対策
高齢化が急速に進んでいることへの対応策として厚生労働省が中心となり「地域包括ケアシステム」の構築を進めています。
地域包括ケアシステムとは、介護が必要な状態となっても、住まい、医療、介護、予防、生活支援などを一体的に地域が提供し、住み慣れた地域で自分らしい生活を最後まで続けることができるように助け合う体制を目指すものです。
そのための中核的な存在として、全国の自治体に設置されているのが「地域包括支援センター」です。
公立中学校の学区を基準としたエリアごとの設置が目標とされており、お住まいの地域にも最寄りの地域包括支援センターがあるはずですので、老老介護や認認介護に直面して不安を感じたら電話やメール、あるいは訪問によって相談してみましょう。
また、近年では地域のボランティアやシルバー人材センターによる高齢者の見守り活動を行っている自治体も増えています。
老老、認認介護によって生活が立ち行かなくなる前に、家族や行政を頼ることが重要です。