「徘徊」の心理と対応策

認知症の方に見られる特徴的な症状の一つに「徘徊」があります。
徘徊は交通事故や行方不明など命に関わるケースもありますので、注意が必要です。今回は、徘徊をしてしまう心理や、対策等について解説していきます。

徘徊とは?

一般的には、目的もなくうろうろと歩き回る行動を徘徊と呼びます。認知症に伴う記憶障害や見当識障害、判断力の低下などがその要因であるとされています。

記憶障害
過去に経験したできごとやを忘れてしまったり、新しいことが覚えられない状態です。
道順や目的を忘れ、自宅や目的地にたどり着けなくなるといったケースが考えられます。

✅見当識障害
自分が置かれている状況を正しく理解できなくなる状態です。たとえば今日は何月何日か、今が何時か、今自分がどこにいるのか、誰と話をしているかなどが正確に認識出来なくなります。
慣れている場所でも突然道順がわからなくなり、遠くまで歩いてしまうこともあります。

✅判断力の低下
判断力や理解力の低下も認知症における中核症状の1つです。
「道に迷ったら誰かに尋ねる」「電車やバスを利用する」といった自己判断が難しくなります。

徘徊の予防策

GPS機能付きのグッズ
GPSとは、人工衛星を利用して位置を測定する仕組みです。代表的なものにスマートフォンが思い浮かびますが、ネックレスや腕時計など身に着けるものにGPS機能が搭載された商品もあります。最近では、靴底にGPS埋め込んだ認知症患者向けの靴も登場していますので、普段からGPS機能付きのグッズを利用する環境を用意しておきましょう。

「SOSネットワーク」への登録
SOSネットワークは、全国各地の自治体や、警察、支援団体(推進コア団体)などが連携して構築している行方不明者を発見保護するしくみです。
行方不明になるおそれがある認知症患者の情報(身体的特徴など)を区役所や地域包括支援センターなどで事前に登録しておくことができます。
タクシー会社や郵便局、ガソリンスタンド、コンビニ、銀行、宅配業者、コミュニティFM放送局、町内会、老人クラブ、介護サービス事業者など、日頃地域で活動している企業や住民団体などが、捜索に協力することになっています。

適度な運動
定期的な外出や適度な運動に連れ出すことで、気分転換にもなり、認知症患者が充実感・疲労感・達成感を味わうことにつながります。
軽いストレッチや散歩、ラジオ体操など、負担なくおこなえる内容を実施しましょう。
外出したい衝動を抑えるだけでなく、適度な疲労感が、夜間に自然な睡眠をもたらす良い方法となり、睡眠の質向上による徘徊予防にも効果的です。
また、家事分担をして何か役割を与えることも、自分の存在意義を認識するとともに良い運動にも繋がります。

介護サービスの利用

介護サービスを利用することで、食事や排泄、レクリエーションなどを専門の介護スタッフに任せることができます。日中1人で過ごす家族の見守りや夜間のサポートなど、家族だけでは対応がむずかしい時間帯のみサービスを利用することも可能です。

徘徊してしまった場合の対処方法

徘徊に気が付いた場合、よく行く場所があればまず確認をしましょう。行き先に見当が付かない場合には、警察へ通報することが大切です。事前に洋服のタグなどへ名前や住所を記名しておくことで身元特定の手掛かりとなります。
また、暑い時期には脱水症状、熱中症、寒い時期には低体温症などの危険性もあります。
健康な状態のまま見つけるには時間が限られますので、無理に家族だけで探そうとせず、近隣住民などにも協力をお願いしてみましょう。

徘徊行動が増えてきたら、まずは外出したい理由に耳を傾けてみるのも重要です。
「自宅に帰りたい」「部屋に誰かがいる」「トイレに行きたい」など、外出したい理由や目的がわかれば症状に合った対応を考えることができます。
また、その際の返答として「ここが家だから出る必要はない」「危険なので外出しないで」といった否定の言葉をかけることで、「怒られた」「怖い」という気持ちになり、また徘徊をしてしまう可能性もあります。
ご家族や周囲の方は、認知症という症状の特性を理解し、なるべく寄り添った対応を心がけましょう。

まとめ

認知症の方が徘徊をしてしまう背景には、もしかしたらその人なりの理由があるのかもしれません。
しかし、認知症ゆえにうまくコミュニケーションが取れないため、その本心を探ることは難しいのです。想像力を働かせて、できるだけ気持ちに寄り添ってあげるようにしましょう。
自宅での対応が難しい場合には、セキュリティ面で安全な施設入所も検討することをおすすめします。

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