「世帯分離」について理解しよう

更新日:2021.05.19

ご両親や身内の介護をしている方の中には、「世帯分離」を検討されたことがある方がいらっしゃるかもしれません。
今回は、あすてるにもこれまで何度かご相談があった「世帯分離」について、どんな内容なのかを見ていきたいと思います。

「世帯分離」とは?

住民票に登録されている1つの世帯を、同じ住所のまま2つ以上の世帯に分けることです。
介護サービスを利用する場合、費用の一部は利用者の自己負担になりますが、その自己負担額は「本人の所得」で決まる場合と「世帯の所得」で決まる場合があるため、例えば、収入の多い息子家族と父親が同居していると、父親の受けた介護サービスの自己負担額が大きくなってしまいます。
そこで、世帯を分離し父親が単独世帯になることで介護費用の自己負担額を減らすことができるのです。

高額介護サービス費制度

介護保険における介護サービスを利用する際、利用者の負担を減らすために「高額介護サービス費」という制度があります。利用者の負担額があらかじめ設定された1ヶ月の上限額を上回った場合に、超えた分は後から利用者に返還される仕組みです。その自己負担の上限額を定める基準となっているのが世帯の所得額になります。

対象となる方自己負担の上限額(月額)
生活保護を受給している方等15,000円(個人)
世帯全員の市町村民税が非課税で公的年金等収入額+前年の合計所得金額が年間80万円以下の方等                    15,000円(個人)
24,600円(世帯)
世帯全員の市町村民税が非課税で上記2つに該当しない方         24,600円(世帯)       
世帯のどなたかが市区町村民税を課税されている方44,400円(世帯)
現役並み所得者に相当する方がいる世帯の方44,400円(世帯)

世帯分離の手続き方法

世帯分離の手続きは、住民登録をしている市区町村の役所で行います。届け出が可能なのは、本人・世帯主・代理人のいずれかで、代理人の場合は親族であっても委任状が必要です。

【必要な持ち物】
・世帯変更届
・本人確認書類
・印鑑
・国民健康保険証
・代理人の場合は委任状

世帯分離のメリット

ここまで見てきたように、高額介護サービス費の他、世帯全体の所得により自己負担額が変わってくる
・高額医療費
・後期高齢者医療保険料
・介護保険料の自己負担額
・施設入所時の食費居住費
などは、世帯分離して総所得を下げることで費用負担の節約につながるケースがあります。
しかし、メリットだけではなく、デメリットもあります。

世帯分離のデメリット

・国民健康保険料の負担額が増えることも
世帯が別になることで、それぞれの世帯主が国民健康保険料を支払わなければいけなくなるため、2つの世帯のトータルで見ると、一人で払っていた場合より負担が増えるケースもあります。

・高額介護サービス費の合算ができなくなる
1世帯に2人以上の要介護者がいた場合、同一世帯であれば合算できた高額介護サービス費や高額療養費が、世帯分離すると合算ができなくなるので、割高になる場合があります。

・会社の健康保険組合を利用したほうが得な場合も
親を介護している世帯主が、会社の健康保険組合に親を扶養家族として加入させている場合、世帯分離後は扶養から外れるため、扶養手当の支給や扶養控除の利用ができなくなります。

・住民票の取得時などに時間がかかる
住民票の取得や印鑑登録などの行政手続きの際、本人以外が手続きするには、委任状が必要になります。同じ家に住んでいても世帯は別になるので、委任状が必要になり手間がかかります。

このように介護費用が軽減できるという点ではメリットが多いように感じますが、デメリットも存在する「世帯分離」。ご家族でよく話し合って、自分が世帯分離をしたらどのくらいメリットがあるのか考えてみる必要がありますね。

この記事は、2021年05月19日に更新されました。
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