地域によってこんなに違う?!伝統的な葬儀形式

地域ごとの風習・習慣はその土地の歴史が詰まっていて興味深いですよね。
前回多様化する葬儀形式を取り上げましたが、今回はその番外編で、各地域の昔ながらの葬儀の特徴や風習の雑学をお届けします。

北海道

北海道の葬儀では香典に領収書が発行される風習があります。
現代ほど交通が発達していなかった頃、土地が広大で雪深い北海道では人の移動は天候に左右されやすく、葬儀に出席できなくなった人が他の出席者に香典を立て替えてもらう事も多かったそうです。そんな時代の名残がいまでも続いているとか。
同様の理由で、遠方からなかなか法要に来られない親戚が多いため、火葬の後に四十九日までの法要を済ませる繰り上げ法要をおこなうことが多いのも特徴です。(正式な四十九日はほとんど家族のみで実施します。)

また、函館地方では火葬を先におこなう「骨葬(前火葬)」が主流です。
・漁業が盛んな地域故に海難事故が多く、海水を浴びた遺体が腐敗しやすいから
・戦前伝染病が流行したことがあり、参列者に広めないよう先に火葬した名残
と、いろいろな説があります。

東北地方

✅青森県
青森をはじめとする東北北部でも函館同様に通夜の前に火葬をおこなう「前火葬」が一般的です。
こちらは津軽藩を築いた津軽為信公の葬式が関係している説が有力と言われています。
1608年の冬、津軽為信は京都に滞在している間に死去しました。当時の交通事情では雪深い津軽まですぐに戻る手段がなく、京都で荼毘に付したのち津軽へ帰り葬儀を行ったことが記録されています。
この時の葬儀の順序が地域の人々に伝わり、「前火葬」が一般的になったそうです。
その他、「取り越し法要」という風習もあります。
初七日や四十九日など忌日法要を葬儀当日に繰り上げておこなうことを「繰り上げ法要」と言いますが、「取り越し法要」ではこれに加えて百箇日法要までを葬儀当日に済ますことが多いようです。

✅宮城県
通夜よりもまず先に火葬をおこなう東北北部に対し、宮城近郊では通夜⇒火葬⇒葬儀、告別式の順におこなうことが多いようです。これも前火葬というくくりになります。こちらもやはり、気候と交通の便が関係しています。
北海道・東北地方は、親戚付き合いが深いことも多く、お見送りにはたくさんの人が集まります。土地の広さも相まって、遺体が傷んでしまうことを避けるためにも前火葬という方式が採用されているようです。

また、宮城の一部地域では、出棺の際に男性は白い三角形の布を、女性は白い頭巾をかぶる風習もあります。故人と同じ白い布を身に着けることで「旅立ちまでともに見送る」という意味があるそうです。出棺の後はすぐに外し、「そこから先は一人で旅立ってください」という成仏の願いを込めます。

各地で見られる風習

✅全国
火葬をする直前まで死者の枕元に供える枕団子は、成仏するまでに地獄・餓鬼・畜生・修羅・人間・天井の六道、六世界を渡るという仏事由来から、それぞれの世界でお腹を空かせて困ることがないように、空腹で困っている人に団子を分け与えることで徳を積み極楽浄土へ行けるように、と一般的には「6個」用意しますが、地域によっては四十九日までの「49個」、初七日までの「7個」、「個人の年齢分」と数や積み方に違いがあるそうです。
逆に浄土真宗ではこのようなお供えはしないのだとか。

✅西日本を中心とする各地
西日本の各地では出棺の際に柩(ひつぎ)を回す風習があります。
これは「柩回し」「三度回し」と呼ばれ、近親者が回します。
柩を回すことによって個人の方向感覚を無くし、家に戻れないようにすることで、迷うことなく冥土へ赴いてほしいという想いを込めているそうです。

他にも出棺の際に個人が愛用していた茶碗を割る「茶碗割り」という儀式があります。これも、生前に愛用していた食器を割ることで、食事をできない状態にし、現世への未練を絶って魂をあの世へ送り出すためだそうです。
また、死出の旅路に愛用品を持たせる、遺族が悲しみにひと段落つける、という意味合いもあります。

葬儀の多様化

どの地域もその土地の文化や歴史に根付いた背景があり興味深いですね。
最近では、遠く離れた場所にいる家族や親戚、故人と親しかった方に、パソコンやスマートフォンからリモートで参列していただくオンライン葬儀や、高齢者や身体の不自由な人らが葬儀に参列する負担を減らすために、車から降りずに参列できるドライブスルー焼香といった新しい形式も増えています。
風習やしきたりを守ることもよし、他の地域の形式を取り入れるもよし、交通網も発達し、情報があふれている現代だからこそできることが増えていますからご自身の納得がいく形を考えるきっかけにしてくださいね。

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