介護の基本!高齢者の尊厳を守る排せつケア

家族の介護において、介護する側、される側ともに多くの方が悩みを持つのが「排せつ介助」ではないでしょうか。
「排せつ」は動物の基本的行動であり、生命維持には欠かせない重要な役割を担いますが、二足歩行を基本とする人間は、膀胱や内臓を支える骨盤底に長い年月を通して大きな負担がかかるため加齢とともにどうしても骨盤底が衰えて失禁しやすくなってしまうのです。
誰にでも起こる自然な衰退の現象ではありますが、排せつ障害は個人の尊厳にかかわるセンシティブな問題ですから、心と体のケアが求められます。
今回はそんな高齢者と排せつの問題について解説していきます。

高齢者の心理

排せつの失敗は加齢に伴う自然の流れとはいえ、失禁するようになった自分を認めたくない心理は誰にでもあるものです。

おむつに抵抗がある、家族に知られたくない、自分でなんとか処理をしたい、という気持ちから汚した下着やおむつを隠してしまったり、家族や介護者にあたる行動をしてしまう例もあります。

介護する側はそうした行動にとらわれるのではなく、その裏にある本音をくみ取り、自尊心を傷つけないケアをすることが重要です。

段階を踏んで進行

排せつ機能の障害は、段階を踏んで徐々に進行していきます。
はじめは声をかけたり同行してあげることで自分でトイレに行き排せつできる状態から、数回のうち1回失敗するようになり、その回数が少しずつ増えていくといったイメージです。
日中は声掛けもしやすいですが、深夜のトイレ介助は介護者も疲労やストレスが溜まってしまいます。
高齢者自身も布団やシーツを汚してしまう、部屋に匂いが残る、という経験をするとどうしてもその記憶が脳裏から離れず、眠れなくなってしまうこともあるそうです。
では、そんな排せつ機能障害に対してどのような対策ができるのかをご紹介します。

排せつに不安を覚えたら

✅介助器具の利用
持ち運び可能な簡易型トイレ(ポータブルトイレ)や、寝たままの状態で尿を受けることができる尿器を、すぐに使えるよう常時部屋に設置しておくことでトイレまで移動が間に合わないというリスクをある程度軽減できます。

✅排便タイミングのコントロール
人間は体の構造上、摂取した食べ物によって腸が刺激されると便意を感じやすくなります。また重力も排便に密接に関係しており、寝たままの状態より上半身だけでも起こしているほうが食べた物が直腸へと流れやすくなります。
排便のタイミングには個人差がありますが、まずは朝食をしっかり決まった時間に、そして座った状態で摂るようになれば、排便を朝型にシフトする効果が見込まれます。

✅失禁用の下着やおむつ、パッドの利用
トイレが間に合わなかったときのセーフティネットとしてパッドやおむつを利用するのも効果的です。心理的不安が軽くなります。

✅就寝前のトイレ誘導、水分の過剰摂取を避ける
就寝前には必ずトイレに行くことを習慣づけましょう。
また、摂取する水分量を意識することも重要です。

排せつケアは介護の第一歩

排せつは生理現象であり、日常生活に不可欠なものです。
食事や入浴と違い待ったがきかず、高齢者は排せつの失敗によって生活意欲に多大なダメージを受けることもあります。
だからこそ介護する側も適切なタイミングと方法でケアを提供することが重要です。相手の気持ちを尊重しながら、寄り添うケアを心がけましょう。

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