認知症にも影響?健康維持と歯の関係

11月はその語呂から「いい○○の日」が多いですよね。
まさに11月8日はいい歯の日でした。
80歳で20本以上自分の歯を残し、何でもよく噛める快適な状態に保とう!という8020運動も有名ですが、今回は認知症とも深いかかわりがある、残った歯の本数と健康寿命について解説していきます。

8020運動の成果は?

平成元年の運動開始当初、80歳で20本の歯が残っている高齢者の達成率は7%程度ときわめて低く、平均残存歯数はなんと4~5本でした。
2016年の厚生労働省調査では8020達成率が50%(2人に1人!)と大幅に増加し、現在、2022年までの達成目標として60%が掲げられています。
歯を健康に保つことの意義が普及し、歯ブラシ以外にもデンタルフロスや歯間ブラシといった補助的な清掃用具の利用が増えたこと、定期歯科検診を受診する人が増加したこと、年間砂糖消費量が減少したことなど、個人の意識や環境の変化によって達成率が高まってきたのです。

口内環境と病気の因果関係

こうした8020運動の普及とともに歯の健康が全身の健康に大きな影響を及ぼすことが、広く知られるようになってきました。
高齢者の死亡原因上位でもある誤嚥性肺炎は、口内の汚れや嚥下機能の低下が病状に大きく関連します。
また、歯周病の炎症により出てくる毒性物質が、歯肉の血管から全身に入り、様々な病気を引き起こしたり悪化させる原因となります。
例えば、アルツハイマー型認知症はアミロイドβというたんぱく質が脳内に蓄積することで発症しますが、歯周病菌はこのアミロイドβの産出、蓄積を促進させる可能性があると言われています。
また、実際に動脈硬化の病巣から歯周病菌が検出された例もあり、動脈硬化の発生そのものとは関係ないものの、心筋梗塞や脳梗塞など症状悪化の要因となり得ることが報告されています。

歯を噛みしめることは踏ん張りをきかせることに有効で、転倒の予防にもつながります。さらにはしっかり噛むことが脳への血流を増やし、認知症の予防にもなると言われています。
このように、様々な要因から残っている歯の本数は多ければ多いほど、寿命が長くなるというデータが報告されているのです。
すでに歯を失っている人でも、ご自身に合った入れ歯を使うことで同じようにリスクを減らすことができます。

高齢者が注意すべき口内環境

✅歯と歯周組織の変化
加齢とともに歯と歯肉の境目がくさび形にすり減ったり、歯肉が退縮することで露出した歯の根にむし歯ができやすくなってしまいます。

✅歯肉の炎症
歯肉が退縮したところに、歯垢や歯石が付着してしまったり、入れ歯があたる刺激などで炎症が起こりやすくなります。

✅舌や口腔粘膜の状態が変化
唾液の分泌量が減ることで、舌や粘膜に変化があらわれ口臭の原因や味覚障害などを引き起こします。

✅口内細菌が増えやすい
口内は適度な温度と湿度が保たれているため、歯や入れ歯の面に付着した細菌をしっかり取り除かなければ、それが栄養となって細菌が増えてしまいます。

✅入れ歯のかみ合わせが悪くなる
何年も同じ入れ歯を使用していると、歯の部分がすり減ったり、自身の歯や歯肉の状態が変化にともなって、少しずつフィットしなくなってきます。この状態を放置してしまうと、食べ物がかみにくくなったり、口内を傷つける原因になります。

今ある歯をしっかり守ろう

口は、食べる、呼吸する、話す、笑うといった、生命の維持や、表情をつくる器官として大切な役割を担っています。
中でも、歯で噛むという動作が、食べ物の摂取以外にも脳の活性化や、体力の向上などに大きな影響を与えているのです。
歯があることの重要性を改めて認識し、定期的な検診や治療、口内環境を清潔に保つ習慣をつけながら、大切な歯を守っていきましょう。

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