もの忘れが増えてきたら?早期発見で認知症の進行を緩やかに

人の名前が思い出せない、大事なものをどこにしまったか忘れてしまった…
そんな「もの忘れ」は、もしかしたら「認知症」の始まりかもしれません。
発症後は時間の経過とともに症状が進行するため、できるだけ早い段階で治療を開始することがポイントになります。
認知症のサインを見逃さないためにも、初期症状や受診の目安を知っておきましょう。

軽度認知障害(MCI)

「認知症」とは、特定の病名ではなく何らかの病気や障害によって脳の働きが悪くなり、日常生活や仕事に支障をきたすようになった状態のことを指します。
そして今は認知症までいかない状態でも、数年後には認知症になる可能性のある、いわゆる認知症予備軍の数が年々増加傾向にあります。
そのため、生活や仕事に支障をきたさないような軽微な症状でも軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)と早期診断がなされるようになりました。軽度認知障害が疑われる症状は以下の通りです。

【代表的な初期症状】
✅さっき会ったばかりの人の名前を思い出せない
✅同じ話をすることが増える
✅口座の暗証番号など大事な情報を忘れる
✅身だしなみに無頓着になる
✅調理の手順が分からなくなる、時間がかかる
✅性格が変化する(怒りっぽくなる、など)
✅これまで趣味だったものが楽しくない、やる気がわかない
✅疲れやすくなる

軽度認知障害と認知症の違い

【軽度認知障害(MCI)の定義】
1.年齢や教育レベルの影響のみでは説明できない記憶障害が存在する。
2.本人または家族による物忘れの訴えがある。
3.全般的な認知機能は正常範囲である。
4.日常生活動作は自立している。
5.認知症ではない。
出典:厚生労働省e-ヘルスネット
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/alcohol/ya-033.html

認知症との大きな違いは、自立した生活を送れることと言えます。
例えば、人の名前が思い出せなかったり、同じ質問を何度も繰り返したりすることは加齢によってある程度仕方のないものです。
これらが頻繁に起こるようになり、もの忘れしたことすら忘れるような状況になってしまうと生活全般が立ち行かなくなり、介護が必要になっていきます。

軽度認知障害の患者は、もの忘れをしている自覚があり、忘れてはいけないことはメモをしたり、どこかに注意書きを貼ったりすることで、自ら対策をすることができるのです。
また、食事や入浴、排せつ、衣服の着脱といった生活基本動作は、自立した生活をするための必須条件ですが、軽度認知障害の場合にはこれらを無理なくおこなえることがほとんどです。一方、認知症の場合にはこの動作が難しくなってきます。
もの忘れ外来を受診することで、老化に伴う正常な「もの忘れ」と「認知症」を区別、診断してもらい、適切な治療を受けることができます。

アルツハイマー型認知症発症のメカニズム

認知症の中でも最も患者数が多いのはアルツハイマー型認知症ですが、様々な研究を経てそのメカニズムが徐々に解明されてきました。
主な原因は、「アミロイドβ」というたんぱく質です。
これは健康な人の脳にも存在する物質であり、通常は短期間で分解、排出されます。しかし、何らかの原因でアミロイドβ同士がくっつき、異常なアミロイドβができると、排出されず脳に蓄積され、健康な神経細胞にアミロイドβがまとわりつきます。
そしてアミロイドβの出す毒素によって神経細胞が死滅し、情報の伝達ができなくなると徐々に脳が委縮します。
その結果、アルツハイマー型認知症が進行していくのです。
このアミロイドβはMCIの段階でもすでに蓄積していると考えられています。

症状に当てはまる方は早めにもの忘れ外来受診を!

最近もの忘れが多くなってきたな、と自覚しても「認知症と診断されたらどうしよう」という不安から受診をためらうケースはよくあります。
しかし、認知症は進行性の病気ですので、できるだけ早く受診することが肝心なのです。
認知症の兆候にいち早く気づき初期の段階で治療を開始すれば、症状が軽いうちに進行が緩やかになります。これは、できるだけ長く自立した生活を続けることにもつながります。
コロナ禍で遠方の家族となかなか会えない状況ではありますが、本人だけでなく周りが気付いてあげることも重要です。高齢者とコミュニケーションをしっかりとって、もの忘れの予兆を逃さないようにしましょう。

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