日本の自然災害と高齢者の避難

近年、数百年に一度といわれる自然災害が立て続けに起こっています。
地震をはじめ、大雨による河川の氾濫や土砂災害、台風被害、火山の噴火など、どこに住んでいても何かしらの危険と隣り合わせです。そして、災害が起きた時に犠牲になる人のほとんどが高齢者だという実態があります。
今回は、高齢者やその家族がどのように自然災害に備えるべきか解説していきます。

日本の自然災害

日本は、その成り立ち、地形、地質、気象などの自然的条件から、台風、豪雨、豪雪、洪水、土砂災害、地震、津波、火山の噴火など様々な自然災害が発生しやすい国と言えます。

日本の国土面積は世界全体における0.28%に過ぎませんが、世界全体の活火山を見るとなんとその7.0%が日本にあります。このことは、火山噴火の多さだけでなく、地震の多さにも影響しています。実際に全世界で起こったマグニチュード6以上の地震の2割以上が日本で起こっているというデータがあるのです。

また、日本にははっきりとした四季があります。そのため季節の変わり目ごとに発生する気象事由により、自然災害の起こりやすい環境となっています。

春に起こりやすい自然災害

融雪洪水
融雪洪水とは、3月~5月頃の雪解け時期、積もった雪が気温上昇により大量に融けて河川に流れ込み、河川を増水させて発生する洪水のことを指します。とは言え雪解けの時期は、予測がしやすく、また発生しやすい河川や過去の被害状況も分かっているため、他の自然災害と比べるとある程度備えやすい災害と言えます。

雪崩
急斜面上などに降り積もった雪や氷が重力の影響を受けて崩れ落ちる現象を指します。日本は国土の半分以上が豪雪地帯に指定されていますので、非常に危険な災害です。
古い積雪面の上に降り積もった新雪だけが滑り落ちる「表層雪崩」は、すべり面が積雪内部にあり、気温が低く、降雪が続く1、2 月頃の厳寒期に多く発生します

斜面に降り積もった古い積雪と新雪が地表面を滑り落ちる「全層雪崩」は、すべり面が地表面にあり、春先の融雪期など気温が上昇した時に多く発生します

表層雪崩は時速100~200km、全層雪崩は時速40~80kmといずれも崩れ落ちるスピードが非常に速く、破壊力も大きいため被害範囲も広くなります。

このほか、強風が吹き荒れる春一番やメイストーム(春の嵐)、黄砂による被害も春の自然災害にあたります。

夏に起こりやすい自然災害

局地的大雨(ゲリラ豪雨)
5月~9月頃、地上付近と上空の温度差がより大きく、大気の状態が不安定な場合に発生する積乱雲によって突発的かつ局地的に降る大雨のことを指します。この積乱雲は数分で急速に発達し、短時間で降りやむのが特徴です。

ゲリラ豪雨という言葉は、近年マスコミを中心に使用され始めた言葉であり正式な気象用語ではありません。気象庁では「局地的大雨」という言葉を使用して降水域が局所的であり、二次災害を想定しにくい大雨に対し注意を呼びかけています。

猛暑
これまで観測された平常の気温と比べて著しく暑く、最高気温が35℃以上の日を猛暑日と言います。
猛暑日という言葉は、2007年の予報用語の改正において、熱中症と共に予報用語として追加されました。猛暑日となる日数は年々増えており、命の危険をともなう熱中症の件数の増加だけでなく、農業、畜産、漁業など生活にも影響を与えています。

土砂災害
土砂災害は、夏のみならず、3月~5月の融雪、6月~7月の梅雨時期、8月~10月の台風時期の大雨や地震、火山の噴火など季節を問わず起こりやすい災害です。山やがけが崩れたり、くずれた土砂が雨水や川の水と混じって流れ出たり、建物を押しつぶしたりと甚大な被害になりやすい傾向にあります。
集中豪雨などによって山腹や川底の石や土砂が一気に下流へと押し流される「土石流」と、地震や雨水の浸透で山の斜面や自然の急傾斜の崖、人工的な造成による斜面がゆるみ、突然崩れ落ちる「がけ崩れ」、地下水の影響と重力によって斜面の一部あるいは全部がゆっくりと斜面下方に移動する「地すべり」などがあり、自身が居住している地域に関して土砂災害のハザードマップを確認しておく必要があります。

秋に起こりやすい自然災害

台風
7月~10月頃にかけて熱帯の海上で発生した熱帯低気圧のうち、北西太平洋または南シナ海上に存在して、中心付近の最大風速が17m/秒以上になったものを台風と呼びます。

暴風域や強風域を伴って日本を縦断することが多く、暴風・強風に加えて局地的豪雨による風水害が発生します。台風は上空の風に流されて動き、北へ向かう性質を持っています。秋の偏西風の影響で9月~10月頃に日本へ接近・上陸する台風は、7月~8月頃の台風と比べて速い速度で北東へ進み、突風が発生しやすくなっています。

長雨(秋雨前線)
秋雨前線は、9月頃~10月頃にかけて日本列島付近に現れる停滞前線を指します。

「秋の長雨」と言われるように、太平洋側の高気圧の勢いが弱まる一方で、大陸側の高気圧が勢いを増すことにより、2つの高気圧の境目に前線が発生して停滞し、秋の長雨を降らせます。

秋雨前線や台風の影響によって大雨が続いたり、気温が高い日には、ゲリラ豪雨(局地的な大雨)が降ることもあり、大きな災害が発生するリスクが高くなるため、注意が必要です。

竜巻等の突風
竜巻とは、自然現象の一つ「突風」に分類され、積乱雲に伴う上昇気流によって9月頃発生する激しい空気の渦巻きのことを指します。

災害をもたらす自然現象の中では規模が小さいですが、毎年、全国各地で発生していて、規模や発生した地域によっては、鉄筋コンクリートの建物を倒壊させるなど大きな被害が発生します。

冬に起こりやすい自然災害

豪雪
豪雪とは、2月~3月頃、比較的短時間に多量に降る雪を指し、一晩に1m以上の降雪が豪雪の目安とされています。

西高東低の気圧配置が強まり上空の強い寒気等によって積乱雲が発達すると、日本海側では雪雲が発生し2,000m級の山々に沿って上昇する際に大雪を降らせます。

積雪や凍結によって引き起こされる雪害の代表的ものとしては、雪崩、除雪中の転落事故などのほか、路面凍結などによる交通災害や歩行中の転倒事故といった災害が考えられます。

乾燥
温度が高いほど空気中の水分量は多くなり、温度が低いほど、空気中の水分量少なくなるため、気温の低い冬の間は、空気が非常に乾燥します。

この空気が乾燥する冬場に発生する災害に「火災の発生」があります。異常乾燥や落雷によって山火事が発生すると、生態系や人命、産業に大きな被害を与えてしまいます。

避難の目安

内閣府が発行する「避難情報に関するガイドライン」によると、住民は「自らの命は自らが守る」意識を持ち、自らの判断で避難行動をとるとの方針が示されており、住民がとるべき行動を直感的に理解しやすくなるよう、5段階の警戒レベルを明記して防災情報が提供されることとなっています。
自治体から【警戒レベル4】避難指示や、【警戒レベル3】高齢者等避難が発令された際には、速やかに避難行動をととることが重要です。
また、避難にあたっては、あらかじめ指定された避難場所へ向かうことにこだわらず、危険箇所である川や崖から少しでも離れた近くの頑丈な建物の上層階に避難するなど、その時々でベストな避難先を選択し、自らの判断でその時点で最善の安全確保行動をとることが重要です。

高齢者の避難

高齢者の独居や、老夫婦のみの世帯が増え続けている現代において、災害時に自力での避難が困難な方は、災害対策基本法により各自治体に作成が義務づけられている「避難行動要支援者名簿」に申請・登録しておくことが重要です。
この名簿に登録しておくことで、民生委員や消防機関、自主防災組織等の支援者が、日常の見守りや避難訓練などを実施し、災害時には避難連絡や避難誘導などをおこないます。地域の防災訓練に参加しておくことも大切です。

また、実際に災害が発生した際の避難先は、自治体が指定する「指定緊急避難場所」や、避難指示エリアに含まれない安全な親戚や知人宅などが挙げられます。災害の種類によっても避難先が変わるため
事前にいくつかの避難先を相談しておくといいでしょう。

ただし、天候や状況によって避難自体が危険なタイミングである場合には、「近隣の安全な場所」や「屋内のより安全な場所(屋内安全確保)」へ移動することを優先してください。
大雨等の場合は、浸水のリスクが少ない高い建物、川から離れた建物などがより安全とされます。自宅内で待機する場合は、上層階の部屋、山や崖からできるだけ離れた部屋などに移動します。

災害時には必要に応じてご高齢者や障がいのある方など特別な配慮を必要とする方を対象とした避難所である「福祉避難所(二次避難所)」が開設されます。
ただし、こちらは受け入れ準備や運営体制が整った後に順次開設される二次的な避難所であるため、注意が必要です。

このように市区町村では、災害時に自力での避難が困難な方のための避難支援制度を実施しています。もしものときに備えて、お住まいの地域にどのような支援体制があるのか調べておきましょう。

記事一覧