子ども本来の時間と引き換えに家事や介護を担うヤングケアラー

更新日:2022.11.10

昨今、社会問題にもなっているヤングケアラー。これは、本来は大人が担うと想定されている家事や、兄弟、祖父母など家族の世話や介護を日常的に行っている子どもを指します。家事や介護などに時間をとられることで、勉学に集中できなかったり、学校でも同年代とコミュニケーションがとりづらいといった問題が生じてしまいます。
今回はヤングケアラーがなぜ社会問題になっているのか、その背景を解説していきます。

ヤングケアラーとは?

ヤングケアラーは、家庭内で主に次のような役割を担っています。
✅親や祖父母の代わりに料理や掃除、洗濯といった家事をしている
✅労働をして家計を支えている
✅日本語ができない家族がいる場合に、その通訳をしている
✅大人に代わって乳幼児の世話をしている
✅アルコールやギャンブルといった依存症がある家族に対応している
✅高齢者や病気、障害のある親、きょうだいの介護、見守り、看病、身の回りの世話などをしている

ヤングケアラーの顕在化

ヤングケアラーという言葉が徐々に言われ始めたのはごく最近のことです。2014年にイギリスで「子どもと家族に関する法律」が成立し、日本でも2020年に埼玉県で全国初のケアラー支援条例が制定され、ヤングケアラーへの支援について明記されました。
これまでの日本社会においても、兄弟姉妹が多い、複数世代で暮らす、といった大家族がめずらしくない時代がありましたので、家族の面倒を見るヤングケアラーは数多く存在していましたし、それが当たり前だという価値観が強かったように思います。
現代は昔に比べると健康保険制度や介護保険制度、児童福祉などの社会福祉サービスが発展していますが、改めて問題が顕在化している背景には、以下が挙げられます。

✅女性の社会進出
女性が社会で活躍する機会が増えたと同時に、日本の平均初婚年齢は上昇し続けています。この晩婚化によって、高齢出産も多くなってきました。
晩婚化したことで、子どもが成人する前に親が何らかの病気にかかり、看病や介護が必要になるケースが目立つようになってきました。また、祖父母に介護が必要になったとき、本来世話をすべき親世代が働き盛りで生活のために介護ができず、まだ10代、20代の孫世代が介護を引き受けるケースもあります。

✅核家族化
一般的に、核家族は家族のなかで大人が占める割合が低くなりやすいため、収入や家事育児の面で負担が増えやすいといわれています。昨今は「共働き世帯」が増加したため、上の子が下の子の面倒をみたり、家事を手伝うといった「仕事」を割り振られることが多くなっています。

✅SNSの発達
SNSが発達することで、自分の置かれている状況を発信することができるようになりました。当事者のみならず、第三者によっても問題提起されるようになり、ヤングケアラーの存在が広く知られるようになりました。

統計調査

令和2年度におこなわれた厚生労働省の調査によると、調査に参加した中学校の46.6%、全日制高校の49.8%にヤングケアラーが「いる」という結果となりました。
また、同調査の「家族の中にあなたがお世話をしている人はいますか」という質問に対し、「いる」と答えた中学2年生は5.7%にのぼりました。これは、回答した中学2年生の17人に1人がヤングケアラーだったということになります。

また、世話をしている家族が「いる」と回答した人について、その頻度を質問すると、半数近くが「ほぼ毎日」世話をしているという結果となりました。
埼玉県が令和2年度高校2年生に対して行った調査では、ヤングケアラーが平日にケアにかける時間は「1時間未満」が4割、「1時間以上2時間未満」が3割でした。
しかし、同年行われた厚生労働省の調査では、平日1日あたりに世話に費やす時間として、中学2年生は平均4時間、全日制高校2年生は平均3.8時間と、さらに長い結果になっています。

ヤングケアラーが直面する問題

先ほども述べたように、日本には古くから「家族の面倒は家族がみるもの」という倫理観が存在しています。しかし現代社会においては、子どもが家族のケアに時間を費やすことがさまざま問題に発展することがわかっています。

まずは、進路に関わる問題です。本来、勉強やスポーツにあてるはずの時間を家事や介護へ費やしてしまうことで、学力や運動能力の低下が懸念されます。また、そのことが影響して進路が狭まったり、進学や就職を諦めるケースも見られます。年齢等に見合わない重い責任や負担を負うことで、享受できたはずの、「子どもとしての時間」と引き換えにしているのです。
家庭の状況を学校や周囲に知られたくないと、相談できずにいるケースも多々あります。

そして、ダブルケアの問題も挙げられます。これは、幼いきょうだいの面倒に加えて、親や祖父母の介護を同時に担わなければならない環境に置かれる状況を指します。
もしもそこに自身の病気が重なるとなれば、家族の生活が破綻する危険性もはらんでいます。

支援策

国では、厚生労働省や文部科学省、法務省などそれぞれの管轄のもとに、複数の電話相談窓口を設けています。
また、早期把握をするために、たとえば学校を休みがちだとか、宿題ができないことが多いなどの兆候がある子どもの状況背景に、家族の世話や介護があった場合はスクールカウンセラーやソーシャルワーカーと連携することで自治体が提供する福祉のサービスにつなぐことなどが想定されています。
厚労省のHPでは、「子どもが子どもでいられる街に」とスローガンが掲げられており、これからの日本を担う大切な子どもたちの将来を守るためにも、家族以外の第三者が客観的に手を差し伸べられる環境を、国全体で作り上げていかなければなりませんね。

この記事は、2022年11月10日に更新されました。
記事一覧