介護は誰がする?!よくある兄弟間トラブル
更新日:2023.09.20
介護の相談を受ける中で、親の介護について、兄弟姉妹が複数人いる場合に「誰が介護を担うのか」でもめるケースをよく耳にします。
今回は、そんな兄弟姉妹間で起こりやすい介護トラブルを紹介します。
介護者の男女比率
仮に親が80歳で介護が必要となったとき、その子はおおよそ50~60代であることが一般的と考えられます。そして、この年代は会社で重要なポジションにつき、まだまだフルに働いている年代であることも多いのではないでしょうか。
これまでの日本社会では、実家を相続する長男が親と一緒に住み、長男の妻が介護を引き受けるというパターンが多くありました。
核家族化や女性の社会進出とともに、その傾向は徐々に弱まっていますが、まだまだ企業の重役は男性が務めていることが多く、介護離職は女性の方が数値が高くなっています。
内閣府から出ている令和2年版の高齢者白書によると、要介護者等からみた主な介護者の続柄は6割弱が同居している人、さらにその内訳は配偶者が25.2%、子が21.8%、子の配偶者が9.7%です。
また、性別については、男性が34.0%、女性が66.0%と女性が多くなっていますから、やはり介護の役割を決めるときに、性差による影響が少なからずあると考えられます。
そのため、女兄弟を含む兄弟構成では介護の役割分担を女性が担う傾向が高くなっているようです。
健康・福祉|令和2年版高齢社会白書(全体版) – 内閣府 (cao.go.jp)
よくあるトラブル
兄弟姉妹のうちの誰かが介護を引き受けた場合、他の兄弟姉妹たちがその人に介護を任せっきりにし、介護の協力や費用面のサポートをせず、たまに顔を出したとしても口だけ出す、という場合、介護を引き受けた人は「なぜ自分だけが介護をしなければならないのか?」という大きな不公平感をもつようになっていきます。
また、親の年金や貯蓄の切り崩しを介護費用に充てていても、介護が長期間に及ぶことで次第にお金が不足する可能性があります。
そうすると介護している人は、介護を引き受けたことを後悔し、兄弟姉妹に対して不信感や嫌悪感を感じ、仲たがいに発展することも珍しくありません。
一方で、介護当事者ではない兄弟姉妹たちも、介護者が介護の延長で実家を乗っ取ってしまうのではないかという疑念を抱くことがあります。
もちろん当事者は「経済的な負担を何も負わなかった兄弟姉妹たちが、遺産の分け前だけ求めてくるのではないか?」と不満を持つことも容易に想像できます。
このように、介護では、世話の押し付け、金銭負担、相続など様々な問題が生じやすいのです。
不平不満が表面化して、互いの信頼関係が薄れると、それぞれが自分を守るために相手を攻撃する言葉を発してしまい、大きなトラブルに発展していくのです。
トラブルを避けるためには?
介護トラブルは、親と兄弟間で事前に話し合いを持っていなかったことがその原因として挙げられます。せっかく家族が集まっているのに暗い話はしたくない、まだまだ元気だから介護の話は早いだろう、と後回しにしてしまいがちだからです。
そのため、親が元気な間に兄弟姉妹と親の間で話し合いを持ち、親自身の気持ちや経済状況を把握しておくことが大切です。
ある日突然脳梗塞で倒れ、そのまま介護が必要になるというケースも多々ありますから、例えば親が仕事を退職する頃をめどにするなど、タイミングを決めておきましょう。
話し合いの際には、居住地や仕事の兼ね合いも加味して主に誰が介護を担うのか、介護の状況が重くなったら施設を希望するか、といった情報のほか、親の預貯金額や資産の状況の把握、兄弟間での介護費用の負担割合についても決めておくと安心です。
主に介護を担う人は金銭負担の割合を少なくするなど、特定の人のみに役割が集中しないよう分配するのも手です。実家から遠い場所に住んでいるケースもよくありますから、実働として介護に協力しにくい状況にある人は、金銭的に援助することを検討しましょう。
介護施設の利用
最終的には介護施設への入居を検討するのも選択肢のひとつです。
介護をする人の身体的、精神的な負担を軽減することにもつながりますし、誰か一人が介護を担うという不公平感を取り除き、トラブルを防ぐことにもつながります。
現在の介護施設は明るく清潔ですし、なにより介護の資格を持ったプロがケアをしてくれます。
基本的には親の預貯金や年金で入居できる施設を探し、不足するようであれば兄弟間で補い合うという形が最善です。しかし、施設に一番近い方がキーパーソンとなり、施設との事務的な打合せや病院の対応などをすることになるでしょうから、相談のうえで調整するといいでしょう。
介護はなるべく早いうちから方針を決めて、みんなで取り組むことが重要です。