ホスピスケアを学ぼう

更新日:2023.08.24

「最後の時をその人らしく暮らせるように支援する施設」を指すホスピスでは、身体的苦痛や死への恐怖をやわらげる医療的、精神的、社会的援助をおこないます。
今回は、ホスピスで受けられる具体的なケアやおおまかな費用などを紹介します。

ホスピスとは?

末期がんや重い病気など、死期が迫った患者に積極的な治療ではなく症状を緩和することを目的としたケアをおこない、穏やかな日常を送れるよう支援することを目的として作られた施設です。
身体的、精神的、社会的な側面から包括的にケアをおこないます。

ホスピスはもともとはラテン語のhospitumに由来し、親切なもてなし、休息の場、病気や疲れた人を保護する場所を意味していましたが、日本ではそこからホスピスを施す施設のことも「ホスピス」と呼ぶようになりました。

また、利用者本人だけでなく、その家族もケアの対象になります。ホスピスで行われるケア全般を指して「ホスピスケア」と呼ばれています。

各種ケアの違い

患者の痛みや負担を軽くするため、ホスピスで提供される基本的な3つのケア「緩和ケア」「ターミナルケア」「看取りケア」について、その違いを紹介いたします。

✅緩和ケア

痛みなどの症状をやわらげることを目的としたケアのことを言い、主に末期がんやエイズなどに罹患した人に行われます。鎮痛薬を使用するなどの医療的な対応や、治療中である場合も含めて心身のケアをおこなうことで、生活の質の向上を目指します。

✅ターミナルケア

認知症や老衰で余命がわずかな人たちの残りの人生を、充実した豊かなものにするケアであり「終末期医療」とも呼ばれています。緩和ケアがターミナルの要素に治療も並行しておこなうのに対し、ターミナルケアでは残された生活を心穏やかに過ごしてもらうことに、より重点を置いています。

✅看取りケア

主に自宅や介護施設で亡くなる直前に施されるケアのこと。たとえ意識がなくなった状態にあったとしても、最期まで本人とコミュニケーションを取り、体調管理に必要な身体的ケアを行います。食事や排泄、褥瘡の防止なども含まれます。

ホスピスケアの内容

ホスピス、緩和ケア病棟では、入院時に本人や家族の意向を聞き、その人が望むケアを決定します。ケアにあたっては医師、看護師だけでなく、管理栄養士や心理職、薬剤師、ソーシャルワーカーなど多職種がチームとなり支援しています。

✅身体的ケア

治療の難しい終末期のがんに伴う緩和医療(呼吸苦など疼痛コントロール)や、痛みの緩和のための放射線治療などを行います。また、それによる食欲の低下や口内炎でも食べやすい食事サポートなどをおこないます。

あわせて、少しでも穏やかに過ごすために体を拭く、髪を梳く、といったた身だしなみを整えることも、ケアとしておこなわれます。
どこまでの処置を行うかは医師と相談の上決定します。

✅精神的ケア

死に対する不安や心残りが大きくなりすぎないよう、心理に関する専門家のサポートや、家族との時間を過ごせるよう調整します。ベッドの周辺の配置する小物を工夫したり、音楽をかけてリラックスできる空間作りなどもおこなわれます。

✅社会的ケア

経済面や福祉制度など、患者やその家族の生活全般について、ソーシャルワーカーがサポートします。また、自宅に戻る場合はケアマネジャー、訪問看護、訪問介護などの手配などをおこないます。

在宅ホスピス

在宅ホスピスとは、医師や訪問看護師が患者の自宅を訪れ、緩和ケアを行うことです。
住みなれた家で最期の時を過ごすことができる上に、病院や施設等と連携しているため、患者や家族の希望によりいつでも病院などでの治療を受けられる環境が整えられているのが特徴です。

在宅でホスピスのケアを受けたい場合には、まず主治医やケアマネジャーに相談しましょう。

このとき、患者自身が自宅で過ごしたいという希望があるだけでなく、患者の介護を引き受ける意志が家族にあること、苦痛や痛みのコントロールなどのホスピスケアをすることができる医療関係者を見つけるなどが必要になります。

在宅でのホスピスケアを考えている場合には、介護保険サービスを上手く利用し、家族の負担を減らすことが大切です。

また、末期がんや医療依存度の高い人が入所し、ケアを受けられる介護施設を「在宅ホスピス」と呼ぶ場合もあるようです。入所にあたっては必要なケアが受けられるか確認し、本人、家族の話し合いのもと検討をしましょう。

ホスピス、緩和ケア病棟の費用

ホスピス、緩和ケア病棟の入院料は、厚生労働省から緩和ケア病棟として承認を受けた施設の場合、1日単位で診療報酬点数が決まっている定額をもとに支払うことになります。

その入院費は厚生労働省により、一日47,910円の定額と定められています(一部加算を除く)。

入院料は健康保険が適用され、入院期間や所得額によって変動します。69歳以下の方は3割負担で、70歳以上の方は1割負担か3割負担になります。

まとめ

ホスピスケアは、人生の終わりに向き合った方の感情的および精神的な要求に対処することに焦点を当てた医療の一種です。残り少ない時間をいかに過ごすか、ご自身や家族がそのような状況に直面したときにどんな選択があるのか、覚えておきましょう。

この記事は、2023年08月24日に更新されました。
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