低栄養に注意!高齢者の食事情
わたしたちは、食べ物に含まれるさまざまな栄養素をエネルギー(熱や力)に変え、体を動かしています。体を動かす原動力がなければ、人間もガソリン切れの車と同じように止まってしまうのです。
今回は、食が細くなる高齢者が陥りやすい低栄養について解説していきます。
低栄養とは?
「低栄養」とは、からだを維持するために必要な栄養素が不足している状態です。
体を動かすために必要なエネルギーの量は、性別、年齢、活動量、体の状態(病気の有無や手術の後など)によって異なります。
特に高齢になると、噛む力や飲み込む力の低下、食欲の低下、食物をからだに取り入れる機能の低下などによって、1日3食の食事を摂取していても、食べる量や食べるものによっては低栄養に陥ることがあります。
低栄養に陥るリスクがある食生活は以下の通りです。
✅食欲が落ちている
✅1回の食事で食べる量が減ってきた
✅肉、魚、卵などのたんぱく質をあまり食べていない
また、低栄養に陥る可能性がある身体状況は以下の通りです。
✅特に減量をしていないが、短期間で5%以上体重が減った
✅BMIの値が低い(70歳未満で18.5以下、70歳以上で20未満)
✅歩く速度が遅くなった、転びやすい、など筋肉量の減少を感じる
✅食事中にむせやすくなった
✅これまでより食事に時間がかかるようになった
✅全身のむくみ、腹水や胸水などが見られ、血中のアルブミン値が低い(3.8g/dl以下)
低栄養の原因
低栄養は、単純に食べる量が少ないことで起こることが多くなっています。
体を動かす機会が減り、お腹が空きにくくなったとしても、人間は活動している限り代謝にエネルギーを使います。
そのため、気付かぬうちに低栄養になっていることがあるのです。
加えて、肉や魚、卵、大豆などに代表されるたんぱく質の摂取が少なくなると、これまで体に蓄えられていた日常生活に必要なたんぱく質が使われていき、「やせ」が進みます。
食べる量の低下で必要なエネルギーを蓄えられないという理由以外に、下痢や嘔吐が続いて食べたものが体に摂り込めない、傷や病気を治すために多くのエネルギーが使われている、運動のし過ぎでエネルギーの消費が多い、といった状況で低栄養になってしまうこともあります。
低栄養の症状
低栄養状態が続くと、内臓や筋肉に貯蔵された糖質や脂質、たんぱく質がからだを維持するために使われ、たんぱく質の摂取量が少ないと、筋力の低下に繋がります。
この筋力の低下は、噛む・飲み込む力の低下、身体機能の衰えによる活動量の低下をもたらし、食欲も食事量も減少するという悪循環へ向かうのです。
特に高齢者はたんぱく質の摂取量が不足してしまいがちなので積極的に摂るようにしましょう
また、食事において必要総カロリーが不足している場合にも、たんぱく質不足と同じように筋力低下につながり、摂取カロリーが活動量に対して不十分であれば、体重は減少してしまいます。
鉄分が不足している場合には貧血も心配です。
年代別のとるべき総カロリーを意識して食事をするように心がけましょう。
改善ポイント
低栄養の大きな原因は食事量が減ることです。
食事量を減らさないためには、活動量を増やして食欲を上げることや、活動するための筋肉を維持することが必要になります。
加齢にともなってゆるやかな身体機能の低下は避けられませんが、それを理解した上で自身に合った食事の内容や摂り方を意識すれば、十分な栄養を摂ることができます。
そのために重要なポイントを紹介します。
①自身の体を理解する
低栄養の対策をするためには、まず体重やBMIを定期的に計測し、自身の栄養状態を知ることが大切です。おおむね1~3か月の短い期間中に体重やBMIの急激な減少が見られた場合には、病院を受診したり食生活を見直す、といった早期の対応が必要となってきます。
また、栄養に偏りが出ないよう、各食品群からバランスよく食べる意識を持ちましょう。
②たんぱく質の多い食材を取り入れる
高齢者のたんぱく質の摂取推奨量は、男性60g/日、女性50g/日と設定されています。1食あたりのたんぱく質摂取の目安は20g程度です。目安としては、あじ中1尾120g、牛や豚、鶏などの肉類100gから摂取できるたんぱく質がだいたい20gです。
食の細い方は、主菜を先に食べたり、市販の栄養補助食品などを活用して効率よくたんぱく質やカロリーを摂取するといった工夫をしてみましょう。
③間食などで食事の量を調整する
必要な食事量を確保するためには、間食や補食を挟むことも効果的です。
高齢者の食事はついやわらかくて食べやすいものを選んでしまうため、たんぱく質やビタミン、カルシウム・鉄・亜鉛などのミネラル、食物繊維が不足する傾向にあります。
間食や補食に市販の栄養補助食品やプロテイン、サプリメントなどを取り入れ、不足しがちな栄養を補うことをおすすめします。
まとめ
今回は、高齢者が陥りやすい低栄養の原因と、その症状や改善のポイントを紹介しました。
食事は体を動かす原動力ですので、自分自身の体と向き合い、ベストな体重や食事量、栄養量を覚えておきましょう。また、定期的に健康診断を受診し、医師の指導を受けることも重要です。
健康な体を保つことを心がけましょう。