墓じまいを考える
社会状況や、維持管理費の問題など、様々な事情でお墓の承継が難しいと考え、お墓を解体して更地にする「墓じまい」という選択をする方が増えています。
実際に墓じまいをするには、何が必要で、どのくらいの費用になるか、イメージが湧かず不安に思っている方も多いのではないでしょうか?
今回は、そんな墓じまいについて解説していきます。
一般的なお墓のしくみ
日本では、条例やその他での規制によって土葬が難しいため、現実的には亡くなったほとんど全ての日本人が火葬されていることになります。
火葬されたあとは、お寺の墓地や、納骨堂、民間の霊園、公営の霊園等に納骨するのが一般的で、その他の選択肢として海洋散骨、自宅保管、手元供養をする場合もあります。
墓地として行政の許可を受けた区域以外に遺骨を埋葬・埋蔵することはできず、例えば自宅の庭先に埋めると死体遺棄罪に該当する恐れがありますので注意が必要です。
本来のお墓は「家制度」の考えが原則となっており、先祖代々のお墓に入れるのは家の継承者とその配偶者という形で脈々と受け継がれてきました。
例えば長男が家を承継し、次男は別の所帯を持った場合、分家として新たにお墓を建てる必要があります。しかし、現在ではお墓への考え方もだいぶ柔軟になっており、継承者やその家族の同意を取り付けることで同じお墓に入れるケースも増えています。
このようなお墓のしくみのもと、春と秋の年2回、「お彼岸」の頃にお墓参りをする風習があります。
亡き故人を偲び、先祖代々のつながりの中で自分の命を再確認する機会でもあり、精神的な役割を持つものであると考えられます。
墓じまいについて
上記のようなお墓のシステムを自分の代で終了し、現在のお墓を解体・撤去して更地へ戻し、その使用権を墓地の管理者に返還することを墓じまいと言います。
なお、墓じまいをした後は、元のお墓から出したご遺骨を、別の場所もしくは別の形で供養する必要があります。
そのため、実際にかかる費用の内訳は「お墓の撤去に関わる費用」「行政手続きに関わる費用」「新しい納骨先に関わる費用」の3点となります。
①お墓の撤去に関わる費用
撤去の工事費、遺骨取り出しの法要に対するお寺へのお布施代、離檀料を含めると20万~50万程度が目安となります。
②行政手続きに関わる費用
墓じまいのためには各種書類が必要となります。全てそろえても数千円で済むことがほとんどです。
埋蔵証明書(埋葬証明書)現在のお墓から取得
受入証明書 新しい納骨先から取得
改葬許可証 埋蔵証明書と受け入れ証明書を提出の上、自治体から取得
③新しい納骨先に関わる費用
どの納骨先や納骨方法を選ぶかによって、費用は大きく前後します。
墓じまい後の一般的な納骨先として永代供養墓、樹木葬、散骨などが挙げられます。
合祀墓で10万円前後、集合墓で50万円前後、個別墓については50万円以上の相場になることが一般的です。
墓じまいをしなければどうなる?
お葬式や供養をする親族や縁者がいなくなった故人やお墓は無縁仏と呼ばれます。
お墓が放置されたまま連絡が付かなくなると「墓地、埋葬等に関する法律」に基づいて、墓地(施設)管理者の意向でお墓を撤去できるようになり、取り出したご遺骨は合祀墓(ごうしぼ)に埋葬する形が一般的です。
「合祀(ごうし)」とは、不特定多数の方のご遺骨を一か所にまとめて供養する方法です。そのため、無縁墓には血縁関係などまったくない他人の遺骨も合祀されています。
一度合祀されてしまったご遺骨は取り出すことができないことが一般的です。
後悔が残らないよう、お墓の承継を負担に感じる場合には、家族と相談の上で早めにお墓じまいの対策をおこないましょう。