介護保険制度の現状を学ぼう

介護保険制度は、高齢化の進展、医療の発達による介護の長期化、核家族化の進行といった、介護のニーズや支える家族をめぐる状況の変化に伴い高齢者の介護を社会全体で支えあう仕組みとして2000年に創設されました。
この介護保険制度の創設により、利用者は居宅サービス、地域密着型サービス、施設サービスなど、自身や家族の希望に合わせて介護サービスを自由に選択できるようになりましたが、その運営には多くの課題も存在します。
今回は、そんな介護保険制度の現状について解説していきます。

介護保険制度の内情

介護保険では原則65歳から、要介護度状態の認定を受けた場合1~3割の負担で必要な介護サービスを利用することができます。
訪問介護など主に住宅で受けるサービスは要介護度に応じて1か月の支給限度額が決まっており、1~3割負担で受けられるのはその範囲内に限られます。

支給限度額は2000年の介護保険制度創設時からほとんど変わっていませんが、当初全員が1割負担だった利用者の自己負担割合は、所得に応じて2割(2015年8月)、3割(2018年8月)が相次いで導入されました。
ただ、統計によると所得の高い人を除き、全体の9割以上は1割負担で介護サービスを受けている現状です。
要介護度は要支援1、2と要介護1~5の7段階あり、区分が上がるほど支給限度額も増えます。


この金額は全国一律です。
限度額を超えた分や、配食や病院への送迎、移送といった介護保険外のサービス利用については全額自己負担となります。

たとえば、要介護4であれば月の区分支給限度額は30万9,380円。
この範囲内に介護サービス利用料が収まっていれば、1割負担の場合多くても約3万円の支出で済むことになります。
データによると、介護保険受給者一人当たり平均サービス利用費用は、比較的軽度な要介護1で月16万7,650円の限度額に対して実際には約7万円強、最も重い要介護5で36万2,170円の限度額に対し約23万円だそうです。(2019年財務省資料)
どの区分においても支給限度額の4割~7割程度の利用ですので、利用者にも余裕があるように見えますが、実情は支払いを節約するために足りない分の介護ケアを家族が担っているケースも多く、本当に受けたいサービスをすべて利用できているとは限らないようです。

介護保険制度の課題

この介護保険制度は、高齢者の暮らしになくてはならない制度ですが、その財源確保においても抜本的な改革が必要です。
介護保険の認定者数は制度発足当初の2000年218万人から、2019年には659万人に増えています。

利用者負担以外の内訳は介護保険料と公費で半分ずつまかなわれていますが、団塊の世代がまもなく75歳を迎えること、介護サービスニーズの高い老々介護世帯が増加していることからも財政面で負担増の議論が避けて通れません。
低所得者に配慮しつつもサービス利用時の自己負担を原則1割から2割にする改革、現状40歳以上が納めている介護保険料の支払い開始年齢引き下げるといった案が出てくる可能性も大いにあります。
また、人材面においても課題が山積みです。
人材確保、介護労働者への処遇改善、ICT(情報通信技術)や介護ロボットを活用した業務の効率化が急がれます。

介護は決して他人事ではなく、いずれ誰にでも起こり得ることですから、現状を把握し社会全体で考えていかなければならない問題ですね。

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