自己負担急増?!2021年8月介護保険制度改正
2021年3月31日に公布された介護保険法施行令等の一部を改正する政令(令和3年政令第97号)等に基づき、令和3年8月1日より補足給付における食費および高額介護(予防)サービス費の負担限度額の見直しが施行され、一部で利用者負担が引き上げられました。
今回は改めてその内容を確認していきます。
補足給付
補足給付とは、介護保険施設(介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、介護医療院)入居者の食費・居住費に関する負担軽減制度です。
介護保険加入者の収入は段階で区分されており、第1~3段階までが補足給付の対象となっています。この範囲は本人・家族全員が住民税非課税の世帯です。
今回の改正では、この第3段階の線引きをさらに
第3段階①年金収入等80万円超120万円以下
第3段階②年金収入等120万円超
と2つに区分し、120万円超の施設入所者について、食費の自己負担限度額を現行の1日650円から1,360円へ引き上げています。
該当する方は月額でおよそ22,000円の負担増です。
ショートステイにおいては、より所得の低い第2段階、第3段階①の負担限度額も引き上げています。
改正後の食費負担額は、第2段階が1日600円(210円増)、第3段階①1,000円(350円増)、第3段階②1,300円(650円増)です。
また、資産に関する要件も厳格化しています。
これまで単身世帯で預貯金などが1,000万円(夫婦世帯2,000万円)以下であれば補足給付の対象とされていました。
これが8月1日以降は第2段階「650万円以下」、第3段階①「550万円以下」、第3段階②「500万円以下」と所得段階に応じて細かく基準を引き直しています。
夫婦世帯の場合はこれらの基準額にそれぞれ1,000万円を上乗せした額となります。
厚生労働省によると、この補足給付見直しの対象者は約27万人(うち施設入所18万人、短期入所9万人)とのことです。
国費ベースで100億円程度の抑制が見込まれています。
高額介護サービス費
利用者の月々の自己負担に対して上限額を設け、それを超えた分を払い戻す「高額介護サービス費」の制度も改正されています。
これまで、「現役並み所得相当(年収383万円以上)」は一律、世帯上限月額44,400円だったものを「年収1,160万円以上」は140,100円、「年収770~1,160万円」は93,000円までの負担となります。
これは医療保険での負担限度額に揃えた形です。
およそ3万人が対象となり、国費ベースで10億円の抑制が試算されています。
厚生労働省(PDF)
https://www.mhlw.go.jp/content/000778218.pdf
今後の展望
介護報酬の改定は基本的に3年ごととなっていますので、次回の介護報酬改定は令和6年4月、西暦でいうと2024年です。
団塊の世代が75歳を迎える2025年の目前ということもあり、このときの改定ではさらに利用者の負担が増し、介護保険の対象となる方も縮小される可能性も大いにあります。
大切な家族の晩年が安心して暮らせる社会であることが理想ですから、そのためにも健康を維持する努力や、介護に関して知識を深めることはもちろん、国の政策に興味をもって自分の意思を選挙で投票していくことも大事ですね。