増加する認知症
今月WHOが発表した認知症に関する新たな報告書によると、世界の認知症患者数は2019年の時点で5520万人にのぼり、これは65歳以上人口の6.9%にあたると推計しています。
また世界各地で進む高齢化に伴い、今後さらに認知症の患者数は増加し、2030年には7800万人、2050年には2019年のおよそ2.5倍に当たる1億3900万人まで増えると推計しています。
一方、認知症の患者やその家族を支える公的な政策が講じられているのは世界の4分の1にとどまっており、WHO事務局長テドロス氏は「すべての認知症の患者が支援を受け、尊厳を保ちながら生きていけるように、協調した方策が必要」と述べ、患者や家族を支える対策が急務であると呼びかけています。
今回はそんな認知症について解説していきます。
日本における認知症患者数
「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」の推計では、2020年の65歳以上の高齢者の認知症有病率は16.7%、約602万人となっており、6人に1人程度が認知症有病者となっています。
また、厚生労働省認知症対策総合研究事業の調査によると、高齢になるにしたがい、女性患者割合が男性に比較して高くなる傾向にあるそうです。
男性が90歳で約40%の有病率に対し、女性は約60%まで増加すると結果が出ています。もちろん平均寿命自体女性の方が長いこともありますが、その性差の原因について確定要因はわかっておらず、一般的に、変化に乏しい生活を送る人が認知症になりやすいと言われています。
認知症の症状とは?
認知症はさまざな原因によって脳細胞の死滅あるいは働きが悪くなることで記憶・判断力の障害が起こり、生活に支障をきたす状態を指します。
単なる加齢に伴うもの忘れの場合、行動の一部、たとえば「朝食に何を食べたか」を忘れてしまう、といったことがよくありますが、認知症の場合には食事をとったという行動そのものを忘れて「まだ食べていない」と言ったり、「食べさせてもらえない」と他者へ被害妄想を引き起こすこともあります。
認知症にも種類があり、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症などその原因も症状も様々です。
「中核症状」では、記憶障害、見当識障害、判断力低下など周囲の現実を正しく認識できなくなります。
「行動・心理症状」では、本人の性格や環境、人間関係などによって引き起こされるうつ状態や妄想といった心理・行動面の症状が現れます。
認知症と診断されたら?
普段の生活から認知症の疑いがある場合、専門の医療機関で診てもらうことが重要です。早期発見であれば、進行を遅らせることができる可能性があります。
しかし、認知症と診断されると様々な行政手続きに不便が生じることも覚えておかなければいけません。
その代表が銀行での手続きです。
銀行の窓口において、判断能力を欠いた正常な受け答えができない場合は預貯金の引き出しや振込、定期預金解約など一切の手続きができなくなってしまい、場合によっては口座の凍結も考えられます。
口座が凍結されてしまうと、引き出しをするためには家庭裁判所が選任する成年後見制度を利用しなければなりません。
このように家族が財産をコントロールできない状況を防ぐためにも、判断能力のあるうちに任意後見契約を結んでおいたり、事前に親が契約する銀行の担当者と面識を持ち、代理人カードの作成や家族信託を相談してみるといいでしょう。
運転免許証に関しても、認知症と診断された場合には免許の取り消しなど行政処分の対象になりますから注意が必要です。
認知症の発症や進行を抑えるために
認知症の予防は、バランスの良い食生活、よく歩き、よく運動する、過度の飲酒やアルコールを控える、趣味や生きがいを持つ、周りとの関係を円滑に保ち、社会とのつながりを持つ、といった日々の積み重ねにあると言われます。
健康寿命を少しでも伸ばしていけるよう心がけていきたいですね。