離れて暮らす親の介護問題~遠距離介護のポイント~
更新日:2022.04.01
昨今、様々な事情で両親と遠く離れて暮らしているケースは珍しくありません。
そんな方々が不安に思っていることは、これから訪れる親の介護ではないでしょうか。
人間にはおおよその寿命が決まっていますから、今は誰の手も借りずに生活できている親御さんも、いつかは介護を必要とする時が来ます。
今回はそんなときの選択肢のひとつ、遠距離介護について解説していきます。
遠距離介護とは?
離れて暮らす親に介護が必要なタイミングとなっても、ご自身が働き盛りの年齢であれば、仕事と家庭の両立に加えて親の介護までこなすことは容易ではありません。
このように、在宅での介護が難しい場合に、遠距離介護という方法が考えられます。
これは、離れて暮らす高齢の両親が安心して生活できるように子が手続きや金銭面でサポートすることを指します。
遠距離介護では、いざという時にすぐ駆けつけることができず、また普段の親の様子も実際に見ているわけではないので心配な点が多いですよね。
遠距離介護には、事前に抑えておきたい重要なポイントがいくつかあります。
確認しておくべき事項
介護が必要になる要因は、徐々に進行する症状から、突発的に発生する症状まで様々なケースが考えられます。そのため、親御さんが元気なうちに、コミュニケーションをとることが肝心です。
具体的に話すべき内容は以下の通りです。
✅経済状況
介護が必要になると、これまでの生活費に加えて介護用品を購入する費用や介護サービスを受ける費用が必要になります。両親の年金額や預貯金、加入している保険の有無などを把握しておくことで、月の生活費が親御さんの支出だけでまかなえるのか、援助が必要なのかの判断がつけられます。
兄弟がいる方は、いざというときのサポート体制について、訪問頻度や資金面での援助バランスなども事前に話し合うことをお勧めします。
✅人間関係
近所づきあいや、趣味の集まり、近くでの親戚づきあいなど、普段から交流のある人たちとの交友関係を把握しておくことが遠距離介護においては重要です。
これは、遠方で自身がすぐに駆け付けることができない分、近所の方々を頼る場面が発生する可能性が高いからです。帰省のタイミングでは、近隣の方にあいさつをして面識を持っておくと安心です。
✅介護における親の希望
認知症の進行や心身の衰えなど実際に介護が始まると親に変わって意思決定をする場面がどうしても出てきます。
そのとき、親御さんの意向に反した選択をしてしまわないよう、老後の過ごし方に対する希望を事前に確認しておくことが重要です。
とはいえ、家族と言えどもいきなり重要な事項を質問攻めすることは難しいことと思います。
親御さんのプライドを傷つけ、不安をあおってしまう可能性も否定できません。
普段の会話の中から徐々に話題にしてみるといいでしょう。
✅地域の介護サービスに関する情報
介護保険サービスを利用するためには、「要介護認定」が必要になります。
これは地域包括支援センターで申請ができます。
まだ介護が必要ない状態でも、これからの心配事を相談したり、介護が必要になったときにおこなう手続きを確認したり、いざという時に頼れる相談場所として活用できますので親御さんの居住地を担当する地域包括支援センターはしっかり把握しておきましょう。
遠距離介護のメリット・デメリット
遠距離介護のポイントを押さえたところで、そのメリットとデメリットを見てみましょう。
【メリット】
親御さんが住み慣れた地域で介護を受けられる
転居をすることなく自身の仕事を継続できる
肉体的な介護のストレスが軽減できる
介護保険サービスの利用に多少有利となる
介護保険サービスについて、遠距離介護をしている場合は、特別養護老人ホームへの入居などの優先順位が高くなる傾向があります。
【デメリット】
金銭面での負担が大きい
有事における緊急対応が難しい
介護事業者や医療機関とのやりとりが煩雑
金銭面での負担は、通常の在宅介護と比べるとかなり金額が変わってきます。
介護を受ける親御さんは、訪問介護、配食、送迎サービスなど同居に比べて多くのサービスを利用する傾向にあるからです。
一方、介護をする遠方の子も交通費や通信費の負担が大きくなります。
通信費に関しては、本人との電話のやり取りや、ケアマネージャー、医療機関の専門家との連絡も増えるためです。この部分を抑える手段として、無料通話アプリやEメールなどを活用しましょう。
遠距離介護で活用できる様々な制度
✅交通費の介護割引
一部の航空各社では、介護保険証や戸籍などの書類を添えて申し込むことで、介護帰省割引を受けられる制度があります。
しかし、場合によっては早期割引の方が安くなることもありますので、計画的な帰省と、急ぎの帰省で制度を使い分けましょう。
なお、航空以外では介護に起因する割引は実施されていません。
✅職場での介護休業・介護休暇制度
介護に起因してまとまった休みを取得したいとき、介護休業や介護休暇といった制度が利用できます。
これは、労働者に認められている権利のため、必要になったときにはまず会社に相談してみましょう。
過去記事:介護休暇と介護休業の使い分け
https://magazine.ustell.jp/archives/628
✅住宅改修費の助成
介護保険に定められた要件を満たしていれば、要介護者が暮らしやすいように住宅を改修する工事費用が一人当たり20万円まで適用されます。また、自治体によってはそれ以外にも改修に対して補助金が出るところもあります。
一緒に暮らせない分、少しでも家の中の危険を減らすに越したことはありません。
過去記事:介護リフォーム
https://magazine.ustell.jp/archives/806
親との付き合い方は人それぞれ
高齢になればなるほど、親は自宅を離れて生活することに抵抗感を持ち、住み慣れた家で老後を過ごしたいと考えることが多いかと思います。これは、新しい環境に移り、さらに人間関係を作るというのは、心身に負担が大きく、大変なことだからです。
介護が必要になり、近くに呼び寄せる、仕事を辞めて実家にUターンする、といった選択肢の他にも、今回紹介したように、遠方に住む親御さんを見守る手段はありますのでご自身や親御さんの希望に沿ったやり方を見つけていきましょう。